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「はじめまして」が繋ぐもの 6

翌朝から早速、シニア犬と出逢った場所を中心に飼い主さん捜しを開始した。
捜索の手がかりとなるシニア犬の写真は、動物愛護センターに運ばれる前に彼が警察へ赴き撮影してきてくれた。
シニア犬の毛色や体格等の特徴と写真、私の連絡先を記したチラシは午前中の内に完成した。
そのチラシを通行人に渡しながら、彼と手分けして一軒一軒訪問する。
けれども聞き込みの努力はなかなか実を結ばず、あっという間に数日が経過してしまった。
今日までに知人を含めた幾人もの協力者のおかげで、捜索範囲はすでに近隣数市に及んでいる。
それでも有益な情報は一件もない。
シニア犬が移送された動物愛護センターに毎日問い合わせをしているが、期待とは裏腹に飼い主さんからの届け出もまだない。
シニア犬だから難しいと覚悟はしていたが、案の定、動物愛護団体関係からの引き出し申請の問い合わせもゼロらしい。
動物愛護センターのホームページに掲載されているシニア犬の姿を見る度に焦燥感に駆られる。
もちろん収容中は最低限の飲食には困っていないはずだ。
だからといっていつまでもそれが続くわけではない。
収容期限は刻々と迫っているのだ。

「とりあえず次のエリアまで聞き込み広げてくるよ、オレ」

連日の猛暑による疲労が相当なもののはずなのに、彼は足を休めようとはしない。
時間はまだ残されている。
私も負けてはいられない。
滴る汗を拭って足を進めた。
その先の公園の生垣で、下涼みをしているネコを見かけた。
……ひょっとして迷子?
そうじゃないといいなあと思いながらチラシを差し出した。

「はじめまして。暑いね。あのさ、このシニア犬の飼い主さんを捜しているんだけど……」

猫はじいっと私を見上げている。

「そっか。知る訳ないか」

自嘲しながら汗を拭って、もう一つ尋ねた。

「じゃあさ、このシニア犬が処分を免れる為にはどんな解決策があると思う?」

猫は引き続きじいっと私を見上げていたが、やおら伸びをしながら立ち上がった。
立てた尻尾の先を少し前に倒しながら私に近寄ってくる。

≪猫の手も借りたいってことか≫
「まあ、否定は出来ないかな」
≪オマエ、猫と住んでるだろ?≫
「えーと……うん。住んでるけど」

猫は鼻をひくひくさせている。

≪その猫達、イケメンだねえ≫
「うーん……猫から見るとそうなのかなあ」
≪まあいいや。ついてきな≫

そんな会話をしたつもりになって、歩き出した猫の後を追った。
途中、塀の上や軒下等の猫道を通られたらどうしようと思ったが杞憂だった。
私が通れる道で案内された先に一軒の家が建っていた。

≪この家の奴も動物好きだ≫
「そうなんだあ」

どうやら『解決策』に繋がるかもしれない場所まで案内してくれたらしい。

「暑い中、わざわざありがとう」
≪じゃあな≫

猫を見送って、私はインターフォンに手を伸ばした。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉