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たとえ離れていても 4

ドア越しに伝わってきたW様(男性の方)の話し声を聞いたYは、ぼくの笑みを不思議そうに見つめてきた。

「今の声、女子じゃなくて男の人でしたけど……なんか、うれしそうですね」
「まあね。じゃあ、よろしく」

ぼくはお泊り犬様にも中座することを詫びて、4階に続く階段を駆け上った。

「失礼します」

4階のドアをノックすると、岡村の声が返ってきた。

「はい。どうぞ」

いいながらドアを開けた岡村越しに、W様たちのお姿がちらっと見えた。
目が合うと、すっと立ち上がる。

「お忙しいところ、急な訪問をして申し訳ありません」

W様(男性の方)は仰ると同時に、深々と頭をお下げになった。
女性の方も、それに倣う。

ぼくも丁寧にお辞儀をして、お詫びを伝えた。

「こちらこそ、お待たせして申し訳ありませんでした」
「そんな、そんな。連絡も入れずにお邪魔した私たちが悪いので」
「お気になさらずに。さあ、どうぞ。おかけください」
「では、お言葉に甘えて。失礼します」

W様たちは椅子に腰を下ろして、じっとぼくを見上げた。
ぼくも、W様たちを静かに見返す。
自然と、どちらからでもなく、お互いに頬がゆるんだ。

その雰囲気の程好いタイミングで、W様たちへのお茶出しを終えた岡村が告げた。

「私はシッターに伺う時間なので失礼しますが、どうぞごゆっくりと」

W様たちは、再び深々と頭をお下げになった。
岡村はお辞儀で応じ、出掛けて行った。
その姿を見送りながら、W様たちに岡村の紹介をした。

「メビー・ラック代表の岡村です」
「先ほどご挨拶を頂きました。申し遅れましたが、こちらは、私の妻です」
「お電話でお話をさせて頂いているので、『はじめまして』と申すべきかどうか……」

W様の奥様が仰ったことは、ぼくも同じ想いだったので、やわらかく相槌を打った。

「そうですね。お互い様です」
「その節は、大変お世話になりました」
「いえいえ。ぼくは大したことをしていませんよ」
「そんなことはありません。私も旦那も、どれだけ助けられたことか」

W様の旦那様も、しみじみとした声色で想いを重ねられた。

「あの時は、私たち夫婦共々、生きた心地がしない日々でした。不安と焦りと心配に、今にも押し潰されそうで……。あの時、絶望の淵で途方に暮れていた私たちに希望の光を灯して頂かなければ、どうなっていたことか……。本当に、本当にありがとうございました」

込み上げた想いに涙ぐんでいらっしゃるW様ご夫婦は、揃って立ち上がり、三度、頭をお下げになった。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉