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たとえ離れていても 6

奥様が求めた同意に、旦那様も”うん、うん”と頷いた。

「本当にそうなんです。あの出来事を話す時にはいつも、Mは猛烈なアピールをしてくるんですよ。『一緒に連れてけ! 一緒に連れてけ!』って。普段は、いるのかいないのか分からないくらい大人しくて静かなのに」

ぼくは、W様ご夫婦が伝えてくれた光景を頭に描き、心に温もりを感じた。

「そうなんですね。それでは、ご迷惑でなければですが、又の機会には、ぼくの方からW様のお宅にお邪魔させてもらいます」

W様ご夫婦の表情が、ぱっと明るくなった。

「ぜひ、お越しください。Mも喜びます。ねえ」

奥様の言葉に、旦那様がやさしい目を浮かべた。

W様ご夫婦が、何故にここまで感謝なさっているかというと、それは、御二人がなによりも愛すべき存在に、ぼくが関与した過去があるからだ。
その存在とは、先程来W様ご夫婦が口にしている、”M”こと、愛猫様のMちゃんのことである。

W様から初めての電話があったのは、真冬の深夜だった。
猫様のシッターに伺ったお宅から帰社し、雑用を終えて帰る道すがら、ぼくの携帯電話に着信があった。

こんな時間に、誰だろう……。
ぼくは立ち止まって、電話をかけてきた相手を確かめようと、かじかんだ手で携帯電話を取り出し、画面に目をやった。
あっ。
そこには、見知った電話番号とお名前がならんでいた。

「もしもし。夜分に申し訳ありませんが、今、電話にお付き合いしてもらえる時間ありますか?」

声の主は、日頃から懇意にさせて頂いているNさんだった。
相変わらずな軽快口調につられるように、ぼくも寒さを忘れ、ハキハキと応じた。

「どうも、どうも。大丈夫ですよ」
「すんません。いつも突然で」
「いえいえ。ここ最近冷え込みが一段と厳しくなってきましたが、Nさん、お元気ですか?」
「おかげさまで、体調を崩している暇はありませんわ。そちらは、どうです?」
「お互い様ですね」

大阪にあるペット葬儀会社の社長さんであるNさんとは、以前に携わった、とある迷子猫様の捜索がきっかけで知り合った。
詳細を述べれば長くなるので、”今”に至るまでの経緯はまた別の機会に綴らせて頂くが、出逢って以来、こうして時折電話をもらう間柄だ。

「それでですね、電話した理由なんですが……」

Nさんが置いたこのわずかな”間”から、ぼくは用件の重みを察した。

「捜索相談ですね」
「そうなんです。今さっき、飼い主さんとの電話を切ったばかりなんですけどね、今回迷子になっているのは猫ですわ」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉