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サンタクロースからの贈り物 10

「この辺りみたいだよ」
「うーん……」

合流したNに案内された場所は交差点になっていた。
いくつかの商店が並ぶこの道は、夕方以降も人通りは少なくない。
決して広い道路ではないが車も通る。
時に、歩行者や自転車とぶつかりそうな場面にヒヤッとする事もある。
Tさんが迷子犬を保護した場所からほぼ直線上に位置する。
距離にして100メートル弱といったところだ。
今Nが立っている正にその場所で、迷子犬の目撃情報があったという。

「確かな証言なんでしょう?」
「うん……」

なにか引っかかるのだろう。
Nは下唇を薄く咬んだ。

「目撃されたのはいつなの?」
「それがさ、Tさんが保護した日よりも前なんだよね」

という事はやはり、迷子期間が短くはないのか……。
感傷的な哀憐にさそわれた私はどことはなく辺りを見渡した。

この付近はお預かりしているワンちゃん達の散歩道の一つだ。
私自身もほぼ毎日といっていいほど頻繁に行き来する界隈でもある。
シッターやヘルパーに伺うお宅も複数あり、歩き慣れた風景が散見する。
にもかかわらずだ。
迷子犬の姿は見たことがなかった。
迷子犬を捜しているという話も一切耳に入っていない。

だからといってNが得た目撃情報に間違いはないはずだ。
写真を見せた上での聞き込みなのだから確度はより一層高いと考えられる。

「じゃあ、迷子期間は長いって事か……」

短絡的な答えにはまり込みそうになっていた私にNが待ったをかけた。

「……そうとも言えないんだよね」
「なんで?」
「なにせ、迷子犬が目撃されているのは一度じゃないから」

混乱した。
田舎道というわけではないのだから、複数の目撃があっても驚くにあたらない。

「目撃が一度じゃないっていうのは想定される事じゃない?」
「そうなんだけど……」
「けど? なに?」
「複数人に目撃されてるっぽいんだよね」

ますます混乱した。
人っ子一人見当たらない道でない限りは、これもまた想定される事態であろう。

「この立地で迷子犬がぽつんと歩いていたら目立つだろうから、複数人の目撃情報があってもおかしくないんじゃない?」
「そうなんだけど……」
「けど? なに?」
「目撃される時間帯がバラバラなんだよね」

混乱が一回りしたのか、私の中でやけにストンと考えがまとまった。
迷子犬が飼い主様や自宅を捜し歩いて行ったり来たりしているのだとしたら、なんら不思議な行動ではない。
でも。
でも。
でも。
そんな事はNも分かっているはずだ。
それでも引っかかる何かがあるから、Nは私のように短絡的な答えに落ち着いていないのだろう。

「バラバラって事はつまり……どういう事だと考えているの?」

Nの瞳に確信めいた力が灯った。

「それはつまりさ……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉