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サンタクロースからの贈り物 11

「迷子ではないんじゃないかと思うんだ」

存外なNの言葉が私から声を奪った。
迷子ではないとは!?
声にならなくても目が訴えていたのだろう。
Nは鼻をすすって説明し始めた。

「聞き込みで得たいくつかの証言と迷子犬の状態を斟酌するとさ、先ずもって棄てられた可能性は低いと思う」

Tさんが仰っていた迷子犬の状態を反芻して、Nの説明と合致する点を見出そうと努力してみる。
私なりの取捨選択後に気になる点は以下の三つだ。

・毛並みが悪くて所々毛玉になっていたのでブラッシングをしたとの事
・体臭がきつめだという事
・部屋の中で動き回って落ち着きがなさそうな事

いずれも迷子期間の長さの指標となる事をあらためてNにぶつけてみた。

「確かにそうとも考えられるし、初期のアプローチとしては間違っていない。迷子や遺棄された犬が知らない人の部屋の中に保護されたならば、直ぐには落ち着かないだろうしね。ただ忘れちゃいけないのは証言内容だよ」
「一度じゃなく複数人に目撃されてて、時間帯もバラバラって事でしょう?」
「そう。加えて同じような場所でなんだよね。目撃されてるのが」
「近くに飼い主様の家があるってわけじゃないの?」
「だったら自力で帰っても良さそうじゃん」
「あ……確かに……」
「もっといえば、聞き込みに協力してくれた人達の反応が割と淡泊なんだよ」
「それって……たまたま犬が苦手な人達だったなんて事はないよね?」
「ゼロじゃないだろうけど、考察の材料としては弱いでしょ」

とばかりうち無言の私にNが持論を繋ぐ。

「迷子犬だったら警察なり行政なりにとっくに通報があってもいいと思うんだ。けどTさんの話によれば飼い主様からの届け出はないって言ってたし」
「うん、言ってた」
「もしもだよ、迷子犬じゃなかったら届け出がないのも納得かなと。つまり、この近所でたまに目撃される脱走犬ってやつ」
「そうか……。だから一人で犬が歩いてても、近所の人達は緊急性を感じないわけか」
「うん。犬が脱走する事に飼い主様も含めて慣れっこなのかも。あとは毛並みが悪いとか体臭がきつめだって事なんだけどさ、それって必ずしも迷子犬だけじゃないじゃん?」
「あっ……外飼いか!」
「普段から外飼いだとしたら、室内で落ち着かないのも無理はないかもしれないし」
「下痢してたのも体調を崩してのことかもね。この時季は寒いし」
「まあね。とにもかくにも、飼い主様のお宅はごく近所な気がするんだ」

Nの推論にいちいち納得していると、Tさんからの着信が入った。
犬の引き渡し準備が整ったのだろう。

「あの……」

ん?
Tさんの声が暗い。
なにかあったのだろうか……。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉