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サンタクロースからの贈り物 15

「はじめまして。私、近所でペットホテル等のお店を営んでいるNと申します」

訝しむ女性をほぐす為に柔和な笑顔を浮かべながら、Nは持参したケースからメビー・ラックのパンフレットを差し出した。
そのパンフレットに目を落とした瞬間、女性の表情から硬さがふわっと消えた。
N、お見事!
絶妙なタイミングでの話しかけと笑顔、なによりもパンフレットの効果はありありだった。

普通、初対面の挨拶では名刺を差し出す。
なのにNはパンフレットを選択した。
その意図は、パンフレットの表紙に印刷されているライクの写真にあった。
犬好きな人なら思わず頬が緩むライクのおとぼけ顔写真は実に愛くるしいのだ。
女性もまた例にもれず犬好きだと分かって、少し安心する私。
そのタイミングで女性に私を紹介し、Nは先を進めた。

「私共の事業の一つに『迷子ペット様捜索パートナー』というものがございまして。その関連で、迷子犬を保護なさったT
さんからのご相談を承ったのです」
「そうなんですね」

言いながら瞬きを繰り返す女性に、簡潔な説明を付け足すN。

「実はですね、パンフレットに写っているこのシニア犬も迷子犬だったんです。私共が保護して飼い主様を捜していたのですが……先の秋口に永眠しましてね」
「まあ……それは、それは……」

この女性が迷子犬の本当の飼い主様だとしたら、境遇を重ね合わせたのかもしれない。
涙ぐんで手のひらを口にあてた仕草から、私はそう感じた。
真っすぐに女性を見ながら話をしているNはどう判断しているのだろうか……。

「ライクの事でうっかり話が逸れて申し訳ありません。早速、本題に入らせて頂きますね」
「あ、はい」
「先程お話させて頂いた通り、私共は迷子ペット様捜索のお手伝いをさせて頂く事がございます。逆に、今回のように迷子ペット様の飼い主様を捜す事も……」

わずかでも見過ごさぬように、女性の心の機微をさぐっているのだろう。
あえて言葉尻を濁したNの目に容赦はなかった。
一呼吸後、Nの気概に押されたかのように女性が頭を下げた。

「お忙しいでしょうに、うちの犬がご迷惑をおかけしまして申し訳ありませんでした」

Nは言葉を発さず、ゆっくりとかぶりを振って女性への返事を済ませた。
こちらはまだ、あなたの犬だとは認めてませんよ??
私にはそう取れる態度に見えた。
女性が本当の飼い主様を装った邪まな人間だとしたら、間違いなく同じように感じているはずだ。

そんな予断を許さない空気が漂う中、女性が急く。

「それで……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉