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サービスエリアの空の下 111

私が電話をした理由を喋るまで、男性は無言だった。
ひょっとしたら、『……いい加減、もう戻った方がいいですよね?』と述べた男性に対し、『まあでも、こちらはなんとかなりそうなんで』と返した私の考えを深読みしたのかもしれない。
自分はもう必要ないのか、というネガティブ思考が読み取れる。
そのせいもあってか、無言の中には緊張が滲んでいるのが、電話越しにでも伝わってきた。

そんな男性を安心させるべく、成る丈やわらかい声音で私は告げた。

「実はですね、今、私の元へ訪問者がいらっしゃいまして」
「訪問者?」
「はい。お二人いらっしゃるのですが、是非とも保護活動のお手伝いをしたい、と申されておられます」
「……お宅さんのところにいるスタッフの方々、ですか?」
「いえ、違います」
「じゃあ、どちら様で?」
「設置している手作り食を私に持たせてくれた方々です」
「ああ……ここに来る前に、お宅さんが会いに行っていた方々ですか。飼い猫の保護についてアドバイスをしていたという?」
「そうです。そうです」
「そのお二人が、なぜに?」
「手作り食の残量を気にして、わざわざ届けに来てくださったのです。せっかく来たついでに保護活動のお手伝いも、と仰っている次第です」
「それは、それは、大変ありがたいことですね」
「ええ。それでですね、保護活動を手伝うにあたって、お二人がご挨拶をしておきたいと申しております。今後の捜索で急を要した場合、私としましても、顔合わせをしておいた方がよろしいかと思いまして」

幽霊状態の”シロ”くん捜しを一時中断しなければならないのを気にしたのか、男性は僅かばかりの躊躇を挟んだ。

けれども、顔合わせの必要性を考える私としては、引くわけにはいかない。
少々強引だが、男性が断りを述べる前に、私はいった。

「お二人にお手伝いをして頂いた方が、草むらの中での”シロ”くん捜しに、より専念できますしね」
「……そうですね」
「では、どうしましょう? どこかで落ち合いたいのですが」
「じゃあ、例の喫煙所辺りでどうですか? 急いで戻りますので」
「分かりました。お二人を連れて、向かいます。ちなみに、お二人には、草むらの中の捜索中とだけお伝えしてあります。それ以外のことは話していませんので」

”それ以外のこと”というのが、幽霊状態の”シロ”くんのことを指していると察してくれたことだろう。
男性は安堵を含んだ声でいった。

「ありがとうございます。では、向かいます」
「はい。後程」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉