どうやらA様は、サービスエリアで私が出逢った三匹の猫様や男性との出来事は、それぞれの良きタイミング同士が引き合わせたものだと仰りたいようだ。
確かに、私もそう思う。
それこそ、”絶対”に存在すると信じて疑わない、御縁に導かれた機会なのだと。
「A様が仰るそのラッキーをカタチにするために出来ることを、誠心誠意、頑張ってきます」
決意を宣言し、私は席を立った。
つられて立ち上がったA様が、励ましの言葉をくれた。
「頑張ってください! 無事に猫ちゃんたちを保護できること、二人で祈っています」
F様も立ち上がって頷くと、思いついたようにいった。
「そうだ! ちょっとだけ待っててください!」
「なによ?」
A様の問いかけを背中で受けたF様は、いそいそとキッチンに向かった。
そして冷蔵庫を開けると、中から真空パックの器を取り出した。
「よかったら、これ、持っていってください」
「それは、なんですか?」
私が聞くと、F様はにっこりとして答えた。
「Kを保護できた時に捕獲器の中に仕掛けた手作り食を、冷凍しておいたものです」
これから保護しようとしている三匹の猫様は、普段から、サービスエリアを訪れる気まぐれな誰彼に揚げ物やらの残飯をもらっているので、男性が与えているドライタイプのキャットフードには、ほとんど見向きもしない傾向が強いのは前述した通りだ。
よって、捕獲器の中に仕掛けるフードは、どのみち、どこかでウェットフード類の購入を考えていた。
「Kががっついて食べるからといって、三匹の猫ちゃんたちも同じように食べてくれる保証はできませんが、ひょっとしたら、これも良きタイミングの一つかもしれないと思って……」
F様のご意見に、A様も同調した。
「そうね。ぜひ、持っていってください! この手作り食でKを保護できたから、縁担ぎにもなるでしょうし」
『サービスエリアの空の下 13』で書いたように、その手作り食は、猫様の身体にとって有害なものは一切使用していない。
その上、手作り食の方がドライフードよりも匂いが拡散しやすいのは確かである。
私は、F様とA様の親切を、ありがたく頂戴することにした。
「では、遠慮なく分けてもらうことにします」
「よかった。じゃあ、捕獲器はベランダに置いてあるので、今、取ってきますね」
F様がベランダに向かうと、A様が照れたようにいった。
「……せっかくのタイミングなので、これからは私たち、ケンカしないように気をつけます」
「そうですね。Kちゃんのためにも、穏やかに暮らしてあげてください」
「本当に、色々とありがとうございました」
「いえいえ」
〈続く〉
あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように
富山桃吉