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サービスエリアの空の下 51

しばしの間を挟んで言い淀んだ後、男性は口を開いた。

「実は……こうして話している間に、キジ白猫の姿を見失ってしまいました……。どちらに向かったかも分かりません……」

白状した男性は一気に自己嫌悪に陥った様子で、その後に言葉を繋がなかった。
私は、すかさず励ます。

「壁の上から、Hさん宅の敷地内に降りたのかもしれませんね」
「多分……そうだと思います。さっきも報告しましたけど、畑を挟んだ隣の家までは距離があります。だから、もしキジ白猫が畑の方に降りたのなら、まだ見える範囲にいるはずかと……」
「なるほど。では、Hさん宅の敷地内に降りたのだと仮定しましょう。だとしたら、勝手に覗き込めないので仕方がありませんよ」
「……自分が見失ったせいです……すみません」
「いえいえ」
「この後は……どうしましょう?」
「Hさん宅の敷地内からまた出てくるのを張り込む案も悪いわけではありませんが、一度、こちらに戻って頂けますか? そろそろ、捕獲器の状態確認をしたいのですが、私が立ち入ることはできませんので」
「そうですよね。分かりました。今すぐ戻ります」
「お気をつけて」

男性がこちらに戻ったら、代わりに、私がHさん宅近辺に向かうという選択肢の検討をするべきだろうと思った。
今後、そちら近辺の捜索を男性に継続してもらうにしても、私自身がその近辺の立地をこの目で知っておいた方がアドバイスしやすいからだ。
しかも、私がそちら方面に行ってる間に、もしもキジ白猫様の姿を見かけたら、保護するチャンスが訪れる可能性もあるだろう。

だが、捕獲器は草むらの中に設置中であるし、キャリーケースには保護済みのキジ白猫様が入っている。
となると、保護できたとしても、安全に運ぶ手段がないわけだ。

だからといって、今現在設置し続けている捕獲器をそちら方面に動かすのは得策とはいえないだろうし、保護済みのキジ白猫様をどうするかを考えなければならない。

キャリーケースの中で、このままもう少々我慢してもらうのか……。
先に、男性の家に連れて行ってあげて、とりあえずは部屋に放ってあげるのか……。

いずれの方法を取るにせよ、だ。
男性に捕獲器の状態確認をしてもらってからの判断となるだろう。

車のドア越しではあるが、キジ白猫様に私は伝えた。

”さっきは、少しだけ、っていったけど、もしかしたら、もっと長い時間、その中で待っていてもらうことになるかもしれない……。そうしたら、ごめんね”

なんのことやら理解していないようだ。
キジ白猫様は私の方をちらっと見ただけで、毛づくろいを始めた。

私は、車を離れた。
そうして、草むらの際に置いた、手作り食の様子を見に行くことにした。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉