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サービスエリアの空の下 53

”教えるもなにも、今さら教える必要はないと思うけど”

茶色猫様がいっている意味を考えれば考えるほど、私は混乱の渦にはまっていった。
そんな私を、さすがに見かねたのだろう。
茶色猫様はやおら立ち上がって、尻尾の先をピンと揺らした。

”ほら。見て”

尻尾の先を辿ると、そこには捜していた白猫様が座っていた。

”え……なんという偶然なのだろうか!”

吃驚し、知らず織らず目を見開いた私であったが、直ぐに考えを改めた。
偶然なんかではない。
茶色猫様が、白猫様を連れてきてくれたのだ。

”ありがとう!”

迷わず御礼を告げた私に、茶色猫様は得意げに後ろ足をピンと伸ばして毛づくろいしながら応じた。

”美味しいものくれた恩返し。いや本当に、あれは美味いからねえ。きっと、あいつも気に入るはずだよ”

”あいつ”とは、いわずもがな白猫様のことであろう。
座っている白猫様に視線をやって、私はいった。

”気に入ってもらえるとありがたいなあ”
”気に入るって。あげてみな”
”そのつもりだよ”

私は持っていた手作り食の一握り分を手にした。
続けて、できるだけ地面に近い低さで手を伸ばす。

”ほら。これ、美味しいらしいよ。食べてみない?”

白猫様は、伸ばした私の手に視線を落とした。
私はじっと待つ。
じっと待って。
じっと待って。
心の奥深くに意識を沈め、白猫様にもう一度伝えた。

”ほら。これ、美味しいらしいよ。食べてみない?”

すると、白猫様は身体ぶるっと震わせた。
そして、私に向かって歩き出す。

私は心を落ち着かせながら、じっと待つ。
じっと待って。
じっと待って。
じっと待っていると――
やがて、白猫様が鼻をクンクンとさせる息を、自身の手の平に感じることができた。

”どうぞ、召し上がれ”

そう伝えた矢先、白猫様は手作り食を口にした。
巧まずして、私の顔から笑みがこぼれた。
ちらりと茶色猫様を見る。

”な? 気に入ってるだろう?”

予想通り、得意げな表情だ。

白猫様がペロリと食べ終わるのを待って、私は間を空けず、追加の手作り食を一握り手に取った。

”ほら、もっと食べていいよ”

私にいわれるまでもなく、白猫様は手作り食に口をつける。
そうこうしているうちに、茶色猫様も近寄ってきた。
私は尋ねた。

”食べる?”
”もちろん!”

私はもう一方の手で手作り食を一握り取り出し、茶色猫様の前に置いた。
茶色猫様は、ご機嫌な様子で食べている。

一時の穏やかな時間を過ごしながら、この後の展開をどうするべきか、私は考えた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉