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サービスエリアの空の下 57

後部座席のドア前に私が近寄ると、そこに寄り掛かるようにして立っていた白猫様が、待っていましたとばかりにすっと座り込んだ。

”今、開けてあげるからね”

私は告げて、後部座席のドアを小さく開いた。
すると――
白猫様はひょいと飛び上がって、後部座席に乗り込んだ。

スローモーションのように流れたその光景を見つめていた私は、ほとんど無意識のうちに後部座席のドアを閉めた。

白猫様、確保。

思ってもみなかった事態だった。
こんなことは、長年の迷子ペット様捜索経験史上、初の出来事である。
実にあっさりとした保護がかなったからなのか、先に保護したキジ白猫様の時とは違って、すぐに歓喜の情が沸き上がってこない。
それでも、まあ、結果オーライである。

私は、後部座席の窓越しに、車内の様子を覗き込んだ。
キャリーケースの開閉部分の隙間を挟んだ二匹は、お互いに鼻を近づけ合い、対面を喜んでいるようであった。

”良かった。良かった”

安堵している私の足元に、茶色猫様が身体をこすりつけてきた。
白猫様の保護に協力した御礼に、手作り食を要求しているようだ。
私としては、それを拒否する理由はない。
むしろ、こちらから御礼を申し出たいほどだったので、すぐさま手作り食の用意をした。

相変わらず満足そうにそれを食し始めた茶色猫様に、私は尋ねた。

”ひょっとして、あの子たちと顔見知りだったの?”
”まあね。エサの在りかを教えてやったりね”
”それって……あっちの方の?”

フェンスの向こう側の幹線道路沿いの民家方面を指さしながらの私の質問に、茶色猫様は答えた。

”あっちも、こっちも、だよ”
”どういうこと?”
”毎日同じ場所にあるエサもあれば、ないものもあるからね”
”ああ、なるほど。その時々って感じだ?”
”そういうこと”
”まあ、なんにしても、ありがとう。おかげで保護してあげられたよ”
”いやいや。まだ、もう一匹いるよ”
”そうだね。その子も保護してあげなくちゃ”
”でも、今はこっちにはいないと思うよ”
”らしいね”
”ん? なんで知ってるの?”
”今さっき、あっちの民家近くで見かけたっていってる人がいて、その人に聞いたんだ”
”ふーん”
”それよりさ、今日中に、あっちから、こっちに戻ってくるかな?”
”そのうち戻ってくるよ。だって、ねぐらはこっちなんだし”
”そっか”

茶色猫様のいう通りだとしたら、このままこちらでキジ白猫様が戻ってくるのを待っていた方が効率的かもしれない。
なんにしても、男性が到着してからの決断となるだろう。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉