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サービスエリアの空の下 60

私に、というよりも、車内にいる白猫様とキジ白猫様に向かって失礼を詫びた男性はしかし、すぐには興奮冷めやらないようであった。
聞きたいことが山ほどあるのに興奮を抑えきれず、上手く言葉がまとまらない、といった具合で、口元をほよほよ動かしている。
見かねた私は、白猫様の保護に至った経緯を、ありのままに話して聞かせた。

話を聞き終わった男性は、それでも、全面的に納得したという満足感を抱いているようには見えなかった。
分からなくもない。
茶色猫様が白猫様を私の元へ導いて保護に協力してくれた、といわれても、その現場に立ち会っていない限り、誰だって俄には信じ難いと思う。

だが、現実に起こったことなのだから、私としては疑いを持つ理由は微塵もない。
それに、男性に話を信じてもらえるかどうかは、それほど重要なことでもないだろう。
白猫様の保護がかなった結果が喜ばしいことに、なんら変わりはないのだから。

そんなスタンスで落ち着いている私に、男性が聞いてきた。

「それで、話に出てきた茶色猫は、今どこにいるんです? もしかして、その茶色猫も保護したのですか?」
「いいえ。その子には首輪が付いていましたから」
「じゃあ、飼い猫ですね」
「どなたかに飼われているのは間違いないでしょうね。ですから、今頃は、自分の家に戻っているのかもしれません」
「飼い猫ということは、やっぱりあっちの民家の猫でしょうね。このサービスエリア内で今までに一度も見かけたことのない猫ですから、たまたまこっちのエリアに迷い込んでしまったのでしょう。無事、家に帰れるといいですけど……」

男性は、心から心配しているようだった。
とはいえ、茶色猫様の言い分からするに、”たまたまこっちのエリアに迷い込んでしまった”というわけではなく、人目につかない時間帯を狙って、民家とこちら側を頻繁に行ったり来たりしているらしい。
であるからして、おそらくは、難無く行き来をしていると思われる。

そもそも、だ。
茶色猫様は、家に戻ったわけではないのかもしれない。
サービスエリアの空の下 58』で、

”今度は、どこに行くの?”

と尋ねた私に、茶色猫様は、

”べつに、どこってことはないけどね”

と答えていた。
具体的な行き先を教えてもらえなかったが、目的を持った足取りであったように感じる。

しかし、このことについても、男性に話したところで、茶色猫様の行き先や目的がはっきりするわけではないだろうから、話題にするのは、あえて止めておいた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉