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サービスエリアの空の下 62

草むら際のぎりぎりまで寄り、その中を見渡すと、男性の姿が見えた。
私の存在には気づいていないようだ。
お願いした通り、なにもせず立っている。

茶色猫様はどこにいるのだろうか……。

気になった私は、男性が立っている位置から捕獲器に繋がる直線状の動線に沿って視線を流した。
だが、茶色猫様の姿を確認できない。
なので、上下左右に視野を広げて見た。
それでも、茶色猫様を見つけられない。

おかしいなあ……。

もう一度、男性に視線を戻す。
その顔が向いている方向を確認し、視線を辿らせてみる。
だがしかし……いくら目を凝らしてみても、やはり、茶色猫様の姿を捉えられなかった。

ひょっとしたら、茶色猫様はもう、捕獲器に限りなく近寄っているのかもしれない……。

そうはいっても、だ。
今現在私が立っている場所からは、捕獲器の様子は見えない。
私は、捕獲器が見える位置に移動する旨を伝えようと男性に話しかけそうになったが、驚かせてしまうかもしれないので、電話をかけることにした。

男性は着信にすぐ気がつき、小声で応答した。

「はい」
「こちらも今、草むらの際まで来ているのですが……」

振り返った男性と目が合う。

「あの子は、どこにいるのですか?」

私の問いかけに、男性は捕獲器の方を指さした。

「あそこら辺にいると思います」
「見える位置に、ですか?」
「いえ。木の陰に入ってしまったのでここからは直接見えないのですが、方向としては間違いありません」
「ということは、捕獲器の中に入ろうとしているわけではないのですね?」
「多分。茶色猫は結局、捕獲器をチラ見しただけで素通りして行きました」
「そうですか。どこにいるのでしょうね…。ちょっと動いてみます」

私はいいながら、見える角度を変えるために横へ移動してみた。
だが、見える範囲に茶色猫様の姿は見えない。

「うーん……もしかしたら、もう遠くへ離れてしまったのかもしれませんね」

私の言葉に対し、男性は申し訳なさそうに溢した。

「ああ……また見失ってしまったのか……」
「いやいや、そこまで気落ちすることはありませんよ」
「……はあ」
「私が、”なにもせず”に立っていてほしいとお願いしたわけですから」
「……はあ」
「とりあえずは電話を繋いだまま、捕獲器のフラップに異常がないかどうかだけ確認してきてもらえますか?」
「分かりました」

男性は直ちに捕獲器に近寄ったらしく、

「異常はなさそうです」

と返事した。

「了解しました。では、電話を切って、こちらまで戻って頂けますか?」
「はい」

直に、私から見える位置に男性は現れ、草むらの中から、完全に身を出した。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉