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サービスエリアの空の下 65

前回ブログ『サービスエリアの空の下 64』の文末で男性がいった、

『”シロ”が止まっていた状態からばっと動き出した時に鳴る鈴音にそっくりだったなあと』

という意見は、猫様と暮らしていない人にとってみれば馴染み深いものではないだろうから、よもや疑わしい発言だと思うかもしれない。
ただ、私は兄弟猫様と共に暮らしているので、その実感をもって、男性の発言にすんなりと頷けた。
確かに、猫様によって動作に違いがある。
止まっていた状態からばっと動き出した瞬間に関していえば、駆け出したその歩数には個体差を確認できるものだ。

それにしても、である。
”シロ”くんはこの草むらの中で生まれ育ったわけではなく、男性宅の納屋で産声を上げ、彼の家で育ったはずだ。
なによりも、”シロ”くんはすでにお亡くなりになっているので、草むらの中で鈴音を鳴らすことはあり得ない。
そうである故に、男性の想いに適する反応を上手く見せることができない私がいた。

男性自身にしても、まさか”シロ”くんが生き返ったとは思っていないであろう。
そこまで理性を失っている言動を見せたことは、ここまで一度もない。
おそらくは懐かしみの一種に違いない、という解釈に私は努めた。

しかし、男性が口にしたつぎの言葉で、私の解釈とはべつの意味があることを知った。

「たぶん今、”シロ”は草むらの中にいます。とはいっても、生きていた頃の実物の姿ではなくて、幽霊の状態とでもいいますか……」
「……幽霊!?」
「そうですよね。こんなことをいったら、気が触れたのだと思われるでしょうけど……」
「いや……そこまでは思っていませんよ。けれども、です。仰るように、”シロ”くんが幽霊の状態で草むらの中にいたとして、ですよ。どうして鈴音を鳴らしたのでしょうか? もっといえば、どうやって鈴音を鳴らせたのでしょうか?」

幽霊の状態の”シロ”くんが、この世に実物の状態として存在する鈴を鳴らせる術があるのかどうか、私には分からない。
きっと、男性自身も分からないのだと思う。
それでも、上記を尋ねたのは、男性の考えを否定したいからではない。
むしろ、私自身が納得したいがための発言であったといえる。
男性にそれを告げてから、私は意見を重ねた。

「私は、”シロ”くんが付けていた鈴音を存じません。ですから、茶色猫様が付けていた鈴音との違いを聞き分けることは不可能なのです。ただ、それだけの理由で、さっきの鈴音が”シロ”くんのものではないと断言できるほど、幽霊や心霊現象に関する知識を持ち合わせていないのも事実です」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉