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サービスエリアの空の下 74

鈴音を”聞かせてくれた”誰かの正体を知りたい私は、その衝動に従った。
流れるような動作で、鈴音が聞こえてきた右方面に身体を向ける。
視界を広げながら、五人のドライバーがそれぞれの車を駐車した位置に、一歩一歩進んで行く。

そのまま数歩進んだ辺りで、再び鈴音が聞こえた。
前方からだ。
私の足は、引き寄せられるように動く。

さらに数歩進んだ後、再度の鈴音が耳に届いた。
感覚としては、鈴音の音量が、最初よりも大きくなってきているように思える。
鈴音を”聞かせてくれた”誰かの正体がいる場所に近づいているということか、と考えた私の足は、まるで意識を失っているかのように誘導されて行く。

そんなふうにして歩いて行く度、鈴音の音量は確実に大きくなっていった。
五人のドライバーがそれぞれの車を駐車した位置までは、残り半分くらいの距離になった。
その頃になると、鈴音が聞こえてくる頻度も多くなってきた。
なにかしらの意図を持った誰かが私に鈴音を聞かせていることは、最早、確信に近い。

鈴音を”聞かせてくれた”誰かの正体が、もうすぐはっきりする!

自然、私の中の期待は膨らんだ。
それに伴い、私の歩幅も大きくなる。
五人のドライバーがそれぞれの車を駐車した位置まで、いよいよあと20メートル強の距離となった。

ところが、である。
ここに至って、聞こえてくる鈴音の音に、私は若干の異変を感じ始めていた。
その音量が、段々と小さくなっている気がするのだ。
加えて、鈴音が聞こえてくる方面にもズレを感じていた。

……ひょっとすると、鈴音を私に聞かせている誰かは、駐車している五台の車からちょっとずつ移動しているのかもしれない。

その考えに従って私は立ち止まり、注視する範囲を絞った。
五台の車を中心として、その周囲に動くものがないか探る。
けれども、なんの存在も見当たらない。

おかしいなあ……。

私は唸るように息を吐き、もう一度、五台の車が駐車している場所に向かって歩き始めた。
少しして、鈴音が聞こえてくる。
その音量はやはり小さくなった気がするし、鈴音が聞こえてきた方面は駐車している五台の車からズレていた。

確認のために、その後も、同じことを数回試してみた。
間違いない。
試す度に鈴音の音量はより小さくなっていくし、聞こえてくる方面のズレは、より顕著となっていく。

この結果から考察できることは、難しいことではない。
私が進むべき方面は、五台の車が駐車している場所ではない、ということだろう。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉