新着情報

飼い猫様の窃盗 10

カーナビの存在を私に隠しきれない現状である以上、今度ばかりは、どう頑張ってもウソでかわせる状況ではありません。
さすがに観念した様子の大柄な男は、渋々、私にいいました。

「分かった。カーナビで調べる。で、どこに行きたいんだ?」

大柄な男の狙いは、実に分かりやすいものでした。
是が非でも車内を覗かれたくはない、という意思が、ひしひしと伝わりました。
こうなると、ますます怪しさ満点です。

私は、適当な行き先場所をでっちあげて、告げました。

「分かった。ちょっと待て……」

そう答えるやいなや、大柄な男は、やせ細った男に目配せをしました。
すると、私の注意が車内に向かうのを阻止するためなのでしょう。
やせ細った男が、やけにフレンドリーな態度で話しかけてきました。

「なんだか、喉が渇きました。どこか、自動販売機のところまで行きましょう!」
「いや、私は大丈夫です」
「いいから、いいから。さっき、私たちのことを心配してくれた御礼です。ご馳走させてください。ね」

そういいながら、自分の身体をバンと私の間に滑り込ませました。
続けざまに私の背中に手を回して、強引に歩かせようとしてきました。

この場を離れるわけにはいかない私は、咄嗟に踏ん張りました。

「御礼なんていりませんから。御礼といわれても、特段、何をしたわけではありませんし」

私は、やせ細った男の誘いをきっぱりと断りつつ身を反転し、背中に回された手から逃れました。

やせ細った男は、私を連れて離れることに失敗したので、大柄な男に指示を求めようとしてそちらに振り返りました。
その姿を一瞥した後、大柄な男がバンのドアを開けましたが、私の期待とは裏腹に、ルームランプは点灯しませんでした。

それでも、ほどなくしてバンのエンジンがかかると、カーナビの液晶画面が点灯しました。
おかげで、僅かながらですが、車内が明るくなりました。

チャンスだと捉えた私は目を凝らし、車内の様子を観察しました。
けれども、運転席と助手席の後ろ向こうにはカーテンらしきものが垂れ下がっていて、捕らえられたであろう猫様達の姿はおろか、捕獲器すら確認できませんでした。

大柄な男がカーナビを操作している間、やせ細った男は、ただただ黙ったままでした。
もはや、フレンドリーさの欠片もありません。

それはさておき、この後の展開をどうするべきか……。
私が考えていると、エンジンがかかったままの状態でバンのドアが開き、大柄な男が降りてきました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉