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飼い猫様の窃盗 107

玄関を開けて出てこられた家主様は、雨が降っていることに気づき、天を見上げました。
それから、駐車スペースにいる、雨に濡れた私を見て、心配顔で気遣ってくれました。

「雨、どれくらい前から降っていたんですか?」
「夜半過ぎだったかと思います」
「ちょっと待っていてください」

家主様は室内に引き返し、タオルを持って再び現れました。

「風邪ひいてしまいますから、これ、使ってください」
「わざわざ、すみません。ありがとうございます」

家主様のご親切に甘え、私はタオルを受け取り、捕獲器の中のS君を指さしました。

「ご協力頂いたおかげで、無事にS君を保護することができました」
「本当に良かった」
「それでですね……」

捕獲器にS君が入ったのを確認してから今に至るまでの経緯を、私は家主様に伝えしました。

「……だから、捕獲器を物置の傍から移動したのですね」
「はい」
「捕獲器に入ったS君を見つけて直ぐに、遠慮なく連絡をくださればよろしかったのに……」
「さすがに、深夜帯だったので……」
「ごめんなさいねえ」
「そんな、そんな」

私は続けて、この場を離れざるを得ない緊急事態が発生した時用に備えて郵便ポストに入れた、メモ書きのことを話しました。

「そういう理由で書いたものなので、内容についてはお気になさらずに」
「分かりました。とにかく、S君を無事に保護できて良かったですね。飼い主さんも、さぞかし、よろこんでおられるでしょう?」
「実は……ぜひとも相談に乗って頂きたいことがあると申し上げたのは、その点についてなのです」
「どういうことですか?」
「S君の無事確保をメールで報告済みなのですが、S君の飼い主様からの返信はまだありません。時間帯が時間帯だった故、すでにご就寝なさっていて、未だに気づかれていなくても不思議ではありませんが」
「確か、入院中でしたよね?」
「はい」
「それならば、仕方がありませんね。だけど、じゃあ……飼い主さんが退院できる日まで、S君はどうするんですか?」
「いつ保護できるとも分からなかったので、そのことについて、S君の飼い主様から具体的な話はまだ伺っていません」
「まあ、そうですよね……。とりあえずは、S君の飼い主さんご本人が元気にならないといけませんしね」
「はい。とにかく、S君の飼い主様ご本人と話をしないことには、つぎの行動を起こせない状態なのです。そこで、ご相談があるのですが……」

玄関の中に捕獲器を置かせて頂いている間に、入院なさっているS君の飼い主様の元へ急いで向かい、ご自宅の鍵を預かってから再び戻ってくる考えを、私は家主様に話しました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉