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飼い猫様の窃盗 114

タクシーを降りて自宅に戻るやいなや、私は急いで、熱めのシャワーを浴びました。
雨に打たれ続けてすっかり冷えきっていた身体にシャワーの熱を感じていると、徐々に眠気が覚めていきます。
それと共に、気合を入れ直しました。

よし!
もうしばらくの頑張りだ!

シャワーを浴び終え、地味目な服装に着替えると、私はマイカーのキーを手に取り、家を出ました。
電車で移動しながらだと、不特定多数の人間に出くわし、そのいちいちで、神経を尖らせなければならないからです。
それに加えて一番の理由は、S君を飼い主様のご自宅に送り届けるには、徒歩で移動するよりも車の方が安全だという考えがありました。
徒歩移動の途中で私を捜し回っている男たちに遭遇してしまうなど、何らかのアクシデントが起き、捕獲器のフラップが開いてしまったら一大事です。

車を走らせて10数分後、24時間営業のディスカウントストアに寄りました。
S君が入っている捕獲器には現在、私の上着がかかっていますが、それだと捕獲器全体をくるめません。
ですので、少しでもS君が安心できるように捕獲器全体を覆い隠してあげられる毛布と、それを縛るロープを調達しました。
その二つがあれば、捕獲器のフラップが開くことも防げます。

ディスカウントストアに寄ったついでに購入した飲み物と菓子パンを頬張りながら、いざ、S君の飼い主様が入院している病院へと向かいました。
通勤時間帯に差し掛かっていたので、道中、何度かの渋滞にはまってしまいましたが、それ以外のアクシデントはなく、無事に病院に辿り着けました。

「おはようございます。お待たせして、申し訳ありません」

そう声をかけながら病室に入った私でしたが、S君の飼い主様の姿は見当たりませんでした。

どこへ行ったのだろう……。

佇んでいると、病室の入口に近づいてくる足音が聞こえてきました。
振り返ると、そこにはS君の飼い主様がいらっしゃいました。

「……あ、もう着いていらっしゃったんですね。すみません」
「いえいえ。ところで……」

飼い主様の格好を見て、私は少し首を傾げました。
入院中の服装とは違ったからです。

「ああ、洋服に着替えていることですか」

飼い主様は笑って、その理由を教えてくれました。

「一緒にSの元へ行けることになったんで、着替えたんです」
「退院できることになったのですか!?」
「いえ。一時的な外出許可を頂きました。どうしてもSに会いたいですし、体調もだいぶ回復してきたので」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉