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飼い猫様の窃盗 117

S君を預けた家主様宅のインターフォンを押すと、それについたカメラで私を確認したのでしょう。
直ぐに、家主様の明るい声が返ってきました。

「今、玄関を開けますね」
「お願いします」
「お帰りなさい」

そういいながら玄関扉を開けた家主様は、私が抱えていた荷物に視線を向けました。

「これは、捕獲器をくるむ毛布と、それを縛るロープです。少しでもS君が安心できるように、捕獲器全体を覆い隠してあげたいので」
「そうなんですね。まあ、とりあえず、中へどうぞ」
「お邪魔します」
「待っている間、S君、ずっと大人しくしていたようですよ」
「そうですか。よかった」

私は早速、毛布を広げ、捕獲器にかけていた自分の上着を取りました。
S君は、じっと、こちらを見つめています。

「お待たせして、ごめんね。もうすぐ家に帰れるからね。それと、飼い主様にも会えるから」

S君の耳が、ピクッと動きました。
それと同時に、家主様から質問が飛んできました。

「飼い主さんにも会えるって……?」
「退院はまだなんですけど、実は、一時的な外出許可をもらったそうで、一緒に来たんですよ」
「あら! 外にいらっしゃるなら、あがってもらってください」
「いや。S君を運ぶ前に、入院している間にたまった埃の掃除や換気を済ませようと、今はご自宅に戻られています。それが終わり次第、こちらに来られます」
「そうですか」

私は再びS君に顔を向け、いいました。

「ということだから、飼い主様が来るまで、この毛布でくるむからね」

捕獲器を慎重に持ち上げ、それを毛布の上に置き直して全体をくるんでから、私は一息つきました。

「S君の飼い主様が戻ってくるまで、ここで待たせて頂いてもよろしいですか?」
「どうぞ、どうぞ。では……」

家主様はにっこりと笑って、廊下の奥に姿を消しました。
S君への気配りに、私は深い感謝を抱きました。

その後30分程が経過した時、S君の飼い主様から電話がかかってきました。

「お待たせして、すみません。今から、そちらに向かいます」
「分かりました。トラブルやアクシデントはなさそうですか?」
「おそらく、大丈夫です」
「良かったです。では、お気をつけて、いらしてください」
「はい。それじゃあ、一旦、失礼します」

しばらく待っていると、家の中にインターフォンの音が鳴り渡りました。
そして、家の奥から、家主様が応対する声が聞こえてきました。

「はい、どちら様ですか?」
「はじめまして。迷子猫のSの件で、伺った者ですが……」
「少々お待ちくださいませ」

私がいる玄関に向かって顔を出した家主様が、声を投げてきました。

「飼い主さん、いらっしゃったみたいですよ」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉