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飼い猫様の窃盗 12

やせ細った男は、バッグの中から私が何を取り出すつもりなのかと注視しています。
大柄な男もそれは同じで、鋭い視線が私のバッグに注がれているのを感じます。

「えっと……確か……あっ、あった! あった!」

わざと勿体を付けながら、私がバッグの中から取り出したのは、スマフォの充電器でした。

「今日は充電器を持ち歩いていたのを、すっかり忘れていました。わざわざカーナビで調べてもらって、すみませんでした」

男たちの顔を見ると、苛立ちのようなものが浮かんでいます。
作戦通りとはいえ、刺激の程度を間違えれば、あわや暴力を受けかねない危険もありそうで、正直、決して心地の良い雰囲気とはいえません。
それでも、男たちの苛立ちを誘発してボロを出させるためには、もう少しの辛抱が試されます。

私は、男たちにいいました。

「これでもう、迷子にならずにすみます。では、失礼します」

困惑めいた表情で佇んでいる男たちを横目に、私はスマフォに充電器を差し込み、ゆっくりと歩き出しました。

とはいえ。
男たちから逃げたわけではありません。
つぎに思いついた作戦の実行に動きたかったからです。
捕獲器がまだ仕掛けられているのであれば、私の足が公園に向かうことを男たちは恐れるはずで、それを確かめたかったのです。

私は公園に向かって真っ直ぐに歩き続けながら、再び身を潜めざるを得ない場面に出くわした場合に備え、スマフォをサイレントマナーに設定しました。
そうして、先ほどキジトラ猫様が潜り込んだ生垣辺りに差し掛かると立ち止まり、ちらりとそちらに目を向けました。

パッと見、キジトラ猫様の姿はありませんし、捕獲器も見当たりません。
私は、男たちの方へと向き直りました。

男たちは案の定、私の行き先を確認するべく、こちらをずっと見つめています。
大柄な男は、右手の中指で、自分の左頬を掻いています。
暗くてはっきりとは見えませんが、おそらくは、右眉だけをピクッと上げてもいることでしょう。

細身の男は、大柄な男に気を遣っているに違いありません。
かといって、気の利いたリアクションもとれず、もどかしくて仕方がないといったところでしょうか。

そんな男たちに向かってお辞儀をし、私は再び歩き出しました。
ただし、その行先は公園の入り口ではありません。
そこへの進行方向手前には曲がり角があるので、そこを目指したのです。

その曲がり角を右手に折れる際、私は再度、男たちに向かってお辞儀をしました。
暗い上に遠めの位置でありましたが、男たちがまだこちらの姿を見ているのは分かりました。

私はそのまま進み、男たちの視界から外れました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉