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飼い猫様の窃盗 17

私は空になった捕獲器のフラップを閉めて、広場を挟んだ向こうに仕掛けられているであろう、もう一つの捕獲器を、どのタイミングで確認しに行くべきかを考えました。
逃がしてあげたキジトラ猫様のように、何らかの動物様が捕獲器の中に閉じ込められているのであれば、一刻も早く解放してあげたい気持ちでいっぱいです。
その想いを即刻果たすならば、最短ルートは、広場を直進することです。

ただし、堂々と広場を横切れば、男たちに見つかる危険性は当然高まってしまいます。
最悪の場合、そのせいで救出が出来なくなってしまう可能性も否定できません。

以上のことから、時間がかかったとしても、遠回りをすることにしました。

生い茂る草木に身を隠しながら迂回するとして、目指す捕獲器辺りに到着できるまでの時間はおそらく10分強でしょうが、致し方ありません。
私は歩き出しました。

しばらく進むと、立ち止まらざるを得ない箇所にやってきました。
そこは公園の入り口から広場を貫いて続く歩道で、下手をすれば、バンに待機している大柄な男から目撃されそうな箇所です。
しかも、万が一、その道の反対方向からやせ細った男が歩いて来れば、私の姿は丸見えとなってしまいます。

ただし、この歩道を渡らなければ、目的の茂みに足を踏み入れられません。
なので、私は先ず前かがみの姿勢になって、歩道の左右に、やせ細った男がいないか確認しようとしました。

その時です。
私の対面の茂みから、黒猫様が現れました。
黒猫様はそのまま歩道に飛び降り、ごろんと寝そべって、お腹を見せ始めました。

私はその姿を見て、この近辺を捜索中に何度か出くわしている黒猫様だと気づきました。

”よかった。キミは無事だったんだね”
”無事って、なんのことだよ?”
”そっちの茂みの中に、捕獲器があったでしょう?”
”捕獲器?”
”中にエサが仕掛けてある、金属の箱みたいなものだよ”
”ああ! あのへんてこな奴か!”
”キミ以外の猫様が、閉じ込められてなかった?”
”さっき横を通った時には、誰もいなかったけど”
”そっか。よかった。とにかく、捕獲器の中に入らないように気をつけて”
”あいよ”
”ところで、キミが寝そべっているその歩道上に、今、人間の姿が見えるかな?”
”人間? いないよ”
”そっか。ありがとう”

そんな会話を出来たような気がして、私は茂みから歩道に降りようとしました。
すると、黒猫様がさっと起き上がり、瞬時に緊迫感を漂わせました。
その仕草から”待て!”とのメッセージを私は受け取り、反射的に身体を茂みの中へと引っ込めました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉