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飼い猫様の窃盗 27

私は決意を新たにし、お茶を飲み干そうと、顔を上げました。

よっしゃ!

飲み終わったお茶のペットボトルをショルダーバックの中に入れ、代わりに、捜索用に飼い主様が作成したチラシを取り出しました。
そこに写る迷子猫様の写真を見つめながら、私は誓いました。

”飼い主様がキミにまた会えるように、キミを飼い主様の元へ帰してあげられるように、やれるだけ頑張るからね!”

その時、温くやわらかい風が吹きました。
その風でやさしく泳いだチラシが飛ばされないようにきつく握りしめた私は、立ち上がりました。

行こう!

チラシを再度ショルダーバックに入れ直し、私はアパートの階段を下り始めました。
男たちがバンに乗って逃げたのか、まだ私を捜し回っているのか、それ如何ではこの後の捜索方法を考えねばなりません。
いわば、避けては通れない道なので、先ずはバンの有無を確かめに向かうことにしました。

気分だけは意気揚々ですが、できるだけ物音を立てないように気をつけながら階段を下りる途中、履いていた右のスニーカーの靴ひもがふと気になり、目を向けました。
ですが、べつに、靴ひもがほどけているわけではありません。
それでもやはり、なんとなく無視できなかったので、階段を下りきるやいなや、靴ひもを結び直そうとしゃがみ込みました。

これで、よし!

靴ひもを結び直した私はごく自然と顔を上げ、その姿勢のまま、アパート前に伸びる道を右に行くか左に行くか、順番に首を巡らせました。
どちらの方面にも、見える範囲に男たちの姿はありません。

右……かな。

左から向かう方がバンに早く着くのですが、靴ひもを結び直したのが右だったので、右に決めました。
それに根拠はなく、ただただ、勘に頼っただけです。

余談ですが。
捜索をしていると、たまに、こういう状況が訪れます。
初期捜索の段階ですと顕著で、分かれ道に差し掛かった際などは、どちらの道に行けば迷子ペット様を目撃できるか、それはほとんど勘に頼ったものといえます。
もちろん、これまでに携わった捜索経験や捜索知識を、ないがしろにするわけではありません。

それでも、捜索経験や捜索知識は、ややもすれば固定観念になってしまう危険性を含みます。
心無いペット探偵などが正にそうで、個々の案件ごとに立地や環境が違うというのに、すべての案件において己の固定観念に固執し、捜索範囲を見誤る結果になります。
それを飼い主様が指摘したとしても、そういう輩は口だけは達者なので、保身のためにあらゆるウソを尽きます。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉