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飼い猫様の窃盗 53

飼い主様に告げた時間よりも早く、私は病室に着きました。

「こちらのわがままを聞いてお越し頂き、本当に、ありがとうございます」
「いえいえ。お体の具合はいかがですか?」
「はい。悪くはなっていないと思います」

苦味を織り交ぜた笑い顔を作る飼い主様のご様子からは、不安さを纏った雰囲気があからさまに漂っていました。

「それで、早速ですが、S君の件についての電話内容をお聞かせ願えますか?」
「はい。電話を頂いた方は女性で、番号非通知でのお電話でした……」

飼い主様から伺った、電話内容はこうでした。

その女性の方は、飼い主様が電話に出るなり、

「飼い猫を逃がすなんて、あんたはダメな飼い主だ」

と説教をはじめたといいます。
そして、

「飼い猫は見つかったのか?」

と確認をしてきたそうです。

残念ながら未だ見つかっていない旨を飼い主様が伝えると、今度は小さな声で、

「そうか……。そうか……。そりゃあ、心配だねえ……」

と同情を寄せてくれたといいます。

それだけ聞くと、『本当だとしたら、口にするのも恐ろしい話でして……』と漏らした言葉の意味が分からなかった私は、飼い主様に話の先を促しました。

「その女性の方は確か、S君を目撃したわけではないと飼い主様は仰っていましたが……だとすると、用件は何だったのですか?」
「心配してくれた後、『ある噂を知っているか』と尋ねられました」
「噂?」
「はい。『最近、近所の猫が虐待されているかもしれない』という噂だそうです」
「虐待している輩がいる……ということですか?」
「目的は分かりません。ただ、『近所の猫が減っている』というのです」
「その女性の方は、何を根拠にそう仰っているのですか?」
「うちの近所には、比較的大きな公園があるのですが、その女性の方はどうやら、そこで野良猫たちにエサをあげているみたいで」

賛否はべつとして。
どの地域に迷子ペット様捜索に伺っても、野良猫様にエサやリを行っている人物がいるのは、珍しいことではありません。
それが行われる時間帯は、人気が少ない深夜や早朝の公園が多かったりします。
主たる理由は、猫様嫌いの人たちに見つかってトラブルにならないよう、こっそりと行うからです。

飼い主様にお電話をしたその女性の方も、おそらくはそういった人物だと思われます。
だとすれば、野良猫様の数が減っていることに気づいているのも、なるほど頷けます。

一人で納得している私に、飼い主様は話を続けました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉