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飼い猫様の窃盗 54

「……もしもその噂が本当だとしたら、Sも酷い目に遭っているんじゃないかと心配になってしまいまして、お電話をさせて頂いた次第です」
「そうだったのですね」
「噂について、どう思われますか?」
「正直、その電話一本だけでは、真偽のほどは分かりかねます」
「ですよね……」

溜息交じりにそういった飼い主様の表情が曇りました。
それを振り払う希望を探そうと、私は聞きました。

「確認させてください。飼い主様ご自身が捜索をなさっている間に、その噂にまつわることについて、どなたかが話していたことがありましたか?」
「いえ……その類の話を聞いた覚えはありませんでした」
「では、あからさまに猫様嫌いを主張なさる方はいませんでしたか? たとえば、『庭に排泄されて困っている』ですとか」
「近所に住まわれている全員とコンタクトをとったわけではありませんが、直接お話をさせてもらった皆さんは協力的で、心配してくださる方々ばかりでした」
「そうですか。親切な方々ばかりで、良かったですね」

それは、本心でした。
迷子ペット様の捜索中に聞き込みを行っていると、たまに嫌味や罵倒を浴びせてくる方がいて、飼い主様によっては、それが原因で捜索の継続が困難になってしまうからです。

私は質問を重ねました。

「ご自身が捜索中に、エサやりをしている方を見かけたことはありましたか?」
「公園で、ですか?」
「場所は問いません」
「公園で野良猫にエサをあげている姿を見かけたことはありませんが、『ご近所にバレないようにしながら、自分の庭でこっそりとエサをあげている』と話された方ならいました。Sがそれを食べに来たら『連絡しますね』と仰ってくれて」
「エサやりの方の姿でなくても、置きエサらしきものを、どこかで見かけたことは?」
「うーん……なかったと思います。とにかくSの姿を捜してばかりで、そこまでは注意が回っていませんでした。ダメダメですね……」
「いえいえ。飼い主様の心情からすれば、仕方がないですよ。ところで、噂について話してくれたその女性の方は、今まで、S君らしき猫様を見かけたことはあったのでしょうか?」
「ない、といっていました。『新顔の猫が食べに来ればすぐに分かる』とも」
「いつも、公園のどこで、何時頃にエサやりをしているのかまで教えてくれましたか?」
「いや、そこまでは……。いわれてみれば、ちゃんと確認しておくべきでしたよね。Sも、そのエサを食べに来るかもしれないですものね……」
「まあ、公園付近に張り込んでいれば、いずれその女性の方に会える可能性は高いと思うので、そんなに落ち込まないでください」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉