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飼い猫様の窃盗 55

ここまでの話を聞く限り、飼い主様の捜索方法は最適だったとはいえないまでも、無駄なことをしていたとは思えませんでした。
ましてや、ペット探偵が飼い主様に言い放った、『勝手に捜索現場を引っ掻き回している』との言葉に、私は同調できません。

それにしたって、このままお話を頂戴しているだけでは、アドバイスをするにしても限界でした。
この目で実際に現地を見なければ、そのうち不確かなアドバイスになって、S君の無事発見・保護の可能性を低下させてしまいます。

そう考えながら、少しの間私が沈黙していると、飼い主様は自分自身を安心させるように同意を求めてこられました。

「……Sは、大丈夫ですよね? 捕獲されて、酷い目に遭っていませんよね?」
「先ほどもお伝えしましたが、現時点では、噂が本当かどうかの判断を下せないのが正直なところです」
「……」

言葉を発せずに口元がわななく飼い主様の目を真っ直ぐ見つめて、私は意見を付け足しました。

「現状、確かなことは三つあります。一つは、飼い主様自身が捜索中に、数匹の野良猫様を見たこと」
「はい」
「もう一つは、エサやリの女性の方も、野良猫様の姿を見ていること。そして、S君であるという確証はないにしても、猫様の目撃情報が三件あること、です」
「はい」
「それらを鑑みれば、減っているのが間違いでないにしても、捕獲されていない猫様がいるのは確かで、S君だって捕獲を逃れている可能性もあるわけです」
「そう……ですよね」
「そう信じましょう。でなければ、捜索の継続に支障をきたしてしまいますよ」
「はい。強い気持ちで信じ続けられるように努力します」
「がんばりましょう!」
「はい!」

時刻を確認すると、定められた面会時間が迫っていました。
飼い主様も、それに気づき、

「あ……もう時間ですね。今日も、本当にありがとうございました」

と私に頭を下げてこられました。

「いえいえ。また何かありましたら、いつでもご連絡を」
「そうさせて頂きます。お気をつけてお帰りください」

私は念押しに、S君捜索の継続を励ます言葉と、早期の体調回復を願う言葉を飼い主様に寄せて、病室を去りました。

それからしばらくの間、猫様が捕獲されているという噂について、が頭から離れませんでした。
一体、誰が、どんな目的でそんなことをしているのか……噂が本当で、不穏な目的ならば、断じて許せる行為ではありません。
怒り・悲痛・やるせなさを伴った感情のまま歩いている私の足は、自然と、S君の逸走現場に向かっていました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉