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飼い猫様の窃盗 70

S君に似た猫様は新しいエサ場を見つけ、そちら界隈でお腹を満たしている、と述べたエサやリ男性の説は、充分に有り得る話だと思いました。
エサの量・エサの内容・エサ場の安全性などを比較して、より魅力を感じる方へ定着するのは当然といえるでしょう。

「もう一か所で見かけた場所も案内する?」
「そうしてもらえるとありがたいです」

エサやリ男性に教えてもらった家の塀は、S君の飼い主様がすでに得ていた情報の場所である、

・正午過ぎ、飼い主様のお宅から直線距離で700m(一本目の目撃情報地点とは真逆の方面)に位置する、昔ながらのタバコ屋さんのはす向かいに建つお宅の門柱の隙間から、ひょっこりと顔を出した白猫様がいた
・夕刻、飼い主様のご自宅から直線距離で500m付近(二本目の目撃情報地点であるタバコ屋さん方面)に住まわれているA様のご自宅庭で、S君らしき猫様を見かけた

などと、ほぼ同じ位置でした。
しかも、エサやリ男性がS君らしき猫様を見かけた時間帯とも近かったので、”もしかしたら、S君、もしくはS君似の猫様が姿を見せてくれるかもしれない”と期待をしました。

けれど、生き物である迷子ペット様捜索では、そうそう都合良くいかないのは常です。
残念ながら、望みはかないませんでした。

私は気を取り直し、S君、もしくはS君似の猫様のその後の行方を、エサやリ男性に尋ねました。

「どちらの方向へ向かったか、覚えていらっしゃいますか?」
「塀を伝って隣の家まで歩いて、その後は庭に降りて行った。そこから先は、分からない」
「承知致しました。庭を覗き込んでいたら怪しまれますものね」

念のため、私は確認しました。

「……ところで、私以外にもS君を捜している男の人がいたのですが、以前に見かけたことがありますか?」
「え? どういうこと?」
「このチラシを、近辺で配っていたはずなのですが……」
「知らないなあ」
「ご自宅のポストに、このチラシがポスティングされていたことは?」
「ないと思うよ。猫のことなら、気になるから覚えてるし」
「どこかに、このチラシが貼ってあるのをお見かけになったことは?」
「それもない。まあオレ、自宅で仕事してるから、活動範囲が極めて狭いけどね」

そういって、エサやリ男性は笑っていましたが、私は笑えませんでした。
S君の飼い主様が依頼したペット探偵の初動捜査がいかにいい加減であったか、再認識したからです。

だからといって、溜息ばかり吐いてるわけにはいきません。
私は、質問を続けました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉