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飼い猫様の窃盗 79

エサやリの女性を呼び出す電話のコールがしばらく繰り返されるのを待ちましたが……結局は留守番電話に繋がり、私の祈りは届きませんでした。
それでも、無念に縛られ続けるわけにはいきません。
こうなったら、エサやリの女性が公園内にいるかどうか、自分の目で確かめに行こうと決心しました。

自動販売機の陰からそっと顔を覗かせ、私は男たちの様子を窺いました。
バンの付近には、タバコを喫む大柄の男の姿だけが確認できます。
やせ細った男とニット帽を被った男は、すでに公園内にいるのかもしれません。

見つかってしまう確率を少しでも減らすために、私は迂回し、バンと正反対の位置から公園内に入ろうと考えました。
その移動中に、もう一度エサやリの女性に電話をかけてみましたが、またも繋がりませんでした。

私は諦め、公園内に入る前に、着信音をサイレントモードに切り替えました。
男たちに、自分の存在を知られるきっかけになることを避けたかったからです。

深い時間帯の公園内には、相変わらず人気がなく、静まり返っていました。
ですが、男たちの気配を感じやすいので、むしろ好都合といえます。
周囲を警戒しつつ、エサやリの女性が野良猫様たちにエサを与えている場所を目指す私の足運びは、まるでこそ泥そのものです。

そんなふうにして、目指す場所に着く直前のことでした。
一匹の猫様が私の背後に現れ、振り向いて目が合うと、ちいさく鳴きました。
その、かすれた高音は忘れもしません。
男たちのバンに囚われていた猫様たちの内の、一匹です。(※詳細につきましては、『飼い猫様の窃盗 20』から『飼い猫様の窃盗 23』を参照)

私が解放してあげた、キジ白の被毛を持つその猫様は、おそらくべつの地域で生きてきたであろう子ですが、この地域でも上手く暮らしていたようで安心しました。

”ちゃんと、エサを食べれているかい?”

私の問いかけが伝わったのか、キジ白猫様は鳴いて答えてくれました。

”まあ、なんとか、ね”
”そっか。色々と大変だろうと思うけど……この地域には猫様好きが多いから、上手く過ごしていくんだよ”
”そうみたいだね。それよりもさ”
”なに?”
”大変なのは、そっちだよ”
”……ん? どういうこと?”
”いいから、早くついてきて”
”え?”

ぽかんとしている私をよそに、キジ白猫様は、近くの茂みの中に向かって、そそくさと走って行きました。

”……なんだろう……”

私は自然と導かれ、キジ白猫様の後について行きました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉