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飼い猫様の窃盗 94

気配の正体は、S君なのか……。
べつの猫様なのか……。
ほかの生き物なのか……。
はたまた……。

それを探るべく、私は物置の側面を伝い、少しずつ近づきました。
そして、とうとう物置の角まで進み、あとは捕獲器を覗き込むだけという状況になりました。

この位置まで私が近づいても、捕獲器の傍にいるであろう気配が立ち去る素振りを見せません。
そのことから考えられる可能性としては、二つあります。
一つは、捕獲器の中に入っている状態で、もう一つは、気配の正体が私を待ち伏せしている状態です。
後者だとするならば、気配の正体は猫様を含む野生動物ではなく、人間である可能性が極めて高いと推測されます。

大前提として、この場所に捕獲器を設置していることは、私を除けば、家主様だけです。
家主様が第三者に他言することは考えられません。
というのは、S君が捕獲器に入ってくれるのを妨げないように、ただの興味本位での様子見をしないで頂きたい旨をお伝えしてあるからです。
それを、心からご理解しておられた家主様が、よもや物置の陰に隠れて、私を待ち伏せする必要性は微塵もありません。

となると、です。
ほかに考えられることとしては、何らかのきっかけで捕獲器が設置してあるのを知った誰かが、こっそりと潜んでいる可能性が浮上します。
その場合、私を待ち伏せしているというよりは、私に見つからないように隠れている状態といえるでしょう。
これは、正当な理由なく他人の敷地内に立ち入っている以上、住居侵入罪になります。
そこまでのリスクを負ってまで潜む理由があるとすれば、私を待ち伏せする動機がある者、つまりは、私を捜し回っている男たちのうちの誰かである確率は高そうです。

そんな最悪の事態を想定すれば、無防備に覗き込むのは愚かな行い以外の何物でもありません。
顔を見せた瞬間、有無もいわさず殴られるかもしれませんし、いきなり羽交い絞めにされてしまう危険性もあります。
けれども、捕獲器の様子を確認しなければならない事実は変わりません。
ですので、覗き込む方法ではなく、自分の身の安全を少しでも確保できる方法を、私は考えました。

結果、先ずは物置の陰に身を隠したまま、スマフォの動画モードを起動することにしました。
物置の角越しに手を伸ばして、設置している捕獲器の傍に誰がいるのかを撮影しながら、気配の正体を確認しようと思ったからです。

……どうか、スマフォの存在が気づかれませんように!

祈りながら、私は手を伸ばしました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉