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飼い猫様の窃盗 96

「ところで……」

なぜここにいるのかを再度聞いた私に、エサやりの女性はいいました。

「今日はさ、いつもよりも早く家を出て、公園にエサやりに向かったんだよ。途中、どこかでこの猫を見かけるかもしれないと思ってさ」
「そうなんですね」
「でもまあ、さっぱりでさ。それでも最後にもう一回、公園の周りの路地をグルグルしてみようと思ったんだ。そしたらさ、この家の一本裏の道を歩いてたこの猫が、民家に入って行くのを見かけたんだよ」
「そのまま、S君の行方を追ったわけですね」
「そうそう。でも、直ぐには姿を見つけられなくてねえ。見かけて直ぐ、あんたに連絡をしてやろうと思ったんだけどさ、どうやら、携帯電話を家に忘れてきたらしく、電話できなかったんだ」
「だから、電話に出なかったんですね。心配しましたよ」
「そりゃあ、悪かったねえ」
「いえいえ」
「でさ、携帯電話を取りに家に戻ろうかどうしようか迷ってたら、カシャンって聞こえてきたわけよ、この庭から」

その音は、S君が捕獲器の中に入って、フラップが閉まった音のことでしょう。
不審に思ったエサやりの女性は、悪いことだと分かってはいたものの、どうしても気になって庭に立ち入ったそうです。

「もしかしたら、猫を虐待している”噂”の連中の仕業かと思ってさ……。もしそうなら、捕まえられた猫を助けてやるつもりだったんだよ」
「なんにしても、ご無事で良かったですが……。本当に”噂”の連中の仕業だったら、ご自身の身が危なかったと思いますよ」
「そんなに、乱暴な連中なのかい?」

私は、男たちによるコインパーキングの罠について話しました。
過去ブログ『飼い猫様の窃盗 91』で、エサやり男性に話しかけた時と同様、エサやりの女性の声音は、今さらながら警戒心に浸食されたようです。

「まともじゃない連中だねえ、まったく……」
「そうなんですよ」
「気をつけなよ、あんた。とはいっても、こうして猫を保護できて、もう捜し回ることはないから大丈夫か」
「だといいのですけどね……まだ安心するわけにはいきません」
「どういうことだい?」
「S君の飼い主様のご体調は大分良くなってはいるものの、今まだ入院なさっています。ですので、今直ぐ、ここに迎えに来てもらうわけにはいきません」
「そうなんだねえ……。となると、この猫はどうするんだい? いつまでも、このままってわけにはいかないだろう?」
「ご指摘の通りです。飼い主様にS君を無事に渡すまではまだ、安心するわけにはいかないのです」
「なるほどねえ……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉