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飼い猫様の窃盗 99

メモ帳に、

”家主様
ご協力頂けたおかげで、S君を無事に保護できました。
ありがとうございます。
ただいま、S君の搬送準備のため、一旦現場を離れております。
再び戻るまで、捕獲器はこのまま触れずにお願い申しげます。
このメモ書きを御覧になり次第、お手数ですがお電話ください”

というメッセージを二つ分書いた後、その一つをS君捜索用のチラシと共に、捕獲器に張り付けました。
もう一つのメモ書きは、門柱脇に設置されている郵便ポストに入れました。

というのも、エサやりの女性からの報告内容如何によっては、私がこの場を離れるかもしれないからです。
そのほかにも、この場を離れざるを得ない緊急事態が発生する可能性も考えられます。
いずれの場合も、私が不在中に、家主様が捕獲器に入っているS君に気づくかもしれません。
その時用に、というわけです。

私を捜し回っている男たちにこの場所がバレてしまえば、逃げざるを得ない状況になることも想定しておく必要があります。
もしそうなれば、S君が入っている捕獲器を持って逃げ回ることは得策とはいえません。
逃げる最中に私が転ぶなどして、不運にも捕獲器のフラップが開いてしまえば、S君は再び行方不明になってしまう危険性があるからです。

また、男たちに、捕獲器ごとS君を連れ去られてしまうことも考えられます。
とにかく、ネガティブな事態は絶対に避けなければなりません。

上記をはじめとするリスクを最小限に抑えるならば、このまま、この場所で朝を待ち続けることでしょう。
そして、家主様が起きた時点で、玄関内に捕獲器ごと置いて頂けるようにお願いします。
その間に、S君の飼い主様が入院なさっている病院に行って、ご自宅の鍵を受け取ります。
その後、再びここに戻り、捕獲器に入ったままのS君を飼い主様のご自宅に運ぶのがいいかもしれません。

なんにせよ、私を捜し回っている男たちの今現在の動向によって、臨機応変に対処しなければならないでしょう。

私はとりあえず、S君が入っている捕獲器を、もっと人目につかない場所へ移動することにしました。
家主様宅前に伸びる道路を歩く際に、一番目につかない場所は、建物の裏手になります。
裏手には一軒家が建っていますが、住人以外の目に触れる心配はほぼありません。
しかも、物置の脇よりもさらに暗がりなので、かえって、S君は落ち着くかもしれないと思われます。
S君の様子を見る限り、捕獲器の中で鳴いて暴れたりすることもなさそうなので、近所迷惑になる可能性も低そうです。

以上のことから、私は、捕獲器を建物の裏手に運びました。

”もう少しの辛抱だからね。がんばって”

私の励ましに、S君は尻尾を軽く振って応えてくれました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉