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たとえ離れていても 1

ある日の昼下がり??
代表岡村が、猫様のシッター訪問時間に余裕をもって出掛けた時のことだった。

店の扉が閉まって数分後。
出掛けたばかりの岡村が、再び店内に駆け戻ってきた。

「なにか、忘れもの?」

ぼくの問いかけに、岡村は息を整えながら答えた。

「ちがう。お店の下まで降りたら、人がいらっしゃって……」
「ご見学者の方ですか? それとも、かけこみ営業ですか?」

別のスタッフYが尋ねたが、岡村はかぶりを振る。
続けざま、岡村は、ぼくを指さした。

「どうやら、ご訪問者みたい」
「……ぼくに?」

岡村は頷いた。

どなた様だろう……。
ご宿泊中の犬様のお世話をしていたぼくは、その日のスケジュールを再確認しながら、心当たりを探った。
だが、すぐには答えに辿り着けない。
そうこうしているうちに、Yがにやけながらいった。

「もしかして、勇気をもって、告白に来た人とか!?」
「はあ?」

心当たりは……ない。
Yが考えを重ねる。

「じゃあ……わかった! 訳があって、今は遠距離恋愛中の人が、サプライズで会いに来たとか!?」
「はああ?」

そういったお相手は……いない。
にもかかわらず、恋愛話好きなYの妄想は突っ走る。

「うらやましいなあ。たとえ離れていても、強い絆と確かな愛で結ばれている二人!」
「だから、そんな事実はないって」
「はい、知ってます。実際、モテないですものね」
「そうそう……って、おいっ!」

ツッコミを入れながらも、その点について反論が出来ないぼくは、その後の言葉に詰まった。
すると、小馬鹿にしたような笑みを浮かべたYは、さらに別の考えを披露してきた。

「じゃあ……あっ! 今度こそ分かった! ストーカーだ!」
「いやーん! こわーい!」
「岡村代表、今すぐ警察に相談しなくちゃ!」
「御意!」

Yと岡村の悪ふざけに愛想を尽かせたぼくは、その茶番を冷静に制止しようとした。

「あのさ、いい加減にしろって……」

けれど、Yだけは聞き耳を持たない。

「いやあ、最近は物騒な世の中ですからねえ。へんに優しくふるまって、気を持たせないように気をつけた方がいいですよ」
「心配ご無用。身に覚えはないから」
「そうはいいますけど、身に覚えがないのに、ストーカに付きまとわれるケースだってこのご時世にはあるじゃないですか」
「まあ……」

いくつかのストーカー事件のニュースが、ぼくの頭を不意によぎった。
それを見逃さず、Yは声を潜めた。

「怖くないですか? 完全否定で余裕をかますのは危険ですって」
「いや、でも……まさか……ね……」

いいながらも身を強張らせたぼくを心配したのか、ご宿泊中の犬様が膝の上に飛び乗ってきた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉