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たとえ離れていても 14

「分かりました」
「ご協力ありがとうございます」
「でも……」
「いかがなさいました?」

ヒアリングの時間を頂戴することに、旦那様はまだ少し躊躇っているご様子だ。
一早くMちゃんの捜索を再開したい気持ちが、ひしひしと伝わる。

これを放っておいて話を先に進めることが得策でないことは、過去の経験から明白だ。
かといって、その感情に引っ張られてヒアリングをないがしろにすることが、Mちゃん捜索においてプラスに働くことはない。
それもまた明白である。

とにもかくにも。
この短いやり取りが、ひいては迷子になっているMちゃんの無事発見・保護に多大な影響を与えるため、ぼくはより慎重にならざるを得なかった。

素早く考えを巡らせた結果。
旦那様が想いを告げやすいように、あえてぼくからは言葉を発さず、旦那様の言葉を待つことにした。

「率直に申しますが、ヒアリングをする時間があるなら、Mを捜しに戻りたいのが正直な気持ちです。さっき聞かれたことのほかに、なにをお伝えすればいいのでしょうか?」

やはり、旦那様は冷静ではないようだ。
おそらくは、先に問い合わせたNさんに話した内容とごっちゃになっているのだろう。
ぼくはまだ、

・Mちゃんを捜しはじめてから、今日で五日目になること
・先ほどは、W様のご自宅からどのくらいの距離で捜索をなさっていたか
・捜索現場の今日の天気

の三つしか、旦那様から伺ってはいない。
Mちゃんがどんな猫様なのかさえ知らないのだ。

それらのことをぼくが柔らかく話すと、旦那様は短く息を吸い込み、我にかえった。

「そうですよね……。勝手に焦ってしまい、申し訳ありません」
「お気になさらず。飼い主様にとっては当たり前の感情ですから」
「恐縮です」
「むしろ、抱えておられるお気持ちをストレートにお聞かせ頂き、安心しました」

それは本当のことであると同時に、重要なやり取りである。
実際にご依頼に至るにせよ、アドバイス提供だけになるにせよ、だ。

共に捜索をしていくために必要な真のパートナーシップを結ぶ上で、不安・不満・不信をW様ご夫婦が隠し持ったままでは上手く事が運ばない。
また、飼い主様との信頼関係が構築できていなければ、時に誤った対応をしてしまうリスクも存在する。
それは極力避けたい。

「確度の高い捜索範囲の絞り込みには、詳細なヒアリングが不可欠です。この時間もMちゃんの捜索の一環だとお考え下さい」
「そうですよね」
「では、旦那様。ヒアリングを続けさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「よろしくお願いします」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉