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たとえ離れていても 2

膝の上に乗った後にぼくの頬をペロペロし始めたご宿泊中の犬様を見ながら、岡村はYの妄想を一部否定した。

「質の悪いストーカー説は、的が外れてるかも」
「ええ、残念!」

本気にストーカーだと思い込んでいたような様子のYに、ぼくはぼやいた。

「なにが残念だよ、まったく……」

間髪入れずに、岡村が訪問者の情報を付け足した。

「ご訪問者はお二人で、突然のご訪問を丁寧に詫びていらっしゃる」

……お二人?
うーむ……。
どうにかこうにか思い出そうと必死な私をよそに、Yの悪ふざけは再びアクセルをふかした。

「やっぱり、勇気をもって、告白に来た人ですよ!」
「だーかーらー……」
「きっと、一人じゃ勇気がでないものだから、友だちを連れ立って告白しにきたんですって! 恥ずかしがり屋でかわいいなあ」
「そういった女子に心当たりはないっつーの!」
「ん? 女子かどうかは、分からないじゃないですか。岡村代表はまだ、ご訪問者達が男か女かいってませんし」
「それは……まあ……そうだけど……」
「ほうら。期待してたんですね、なんだかんだ」
「そ、そんなことねえし!」

無駄に動揺したぼくをからかうように、Yは岡村に確認の眼差しを送った。

「で、ご訪問者は女子二人組ですか?」
「うーんとね……」

さも意味ありげな溜めに少しイラっとしたが、岡村とYの悪ふざけペースに乗せられないように、ぼくは一息吐いた。
岡村は、したり顔で言葉を繋いだ。

「ご訪問者はね……男女二人組」
「あらま。女子友達じゃなくて、男友達と告白しにきたのかあ。こりゃあ、その男友達は、女子のことを好きなのかもしれませんね」
「え、なんで?」
「もしも告白が失敗して女子が傷心したら、慰めてあげたいんじゃないですかね。で、結果、自分と付き合ってくれたらという下心があったりとか」
「なるほどね」
「複雑な恋心。せつないですねえ」
「確かに。じゃあさ、遠距離恋愛中の女子が男友達を連れ立って、サプライズで会いに来たヴァージョンだったとしたら?」
「それはもう、簡単ですよ。女子のご訪問目的は、別れ話。『ワタシ、離れ離れの寂しさにもう疲れちゃった……。だから、これから先は、この人に幸せにしてもらうから。サヨナラ』って、展開でしょうね」
「それで別れるって、いわれた方はキツイ最後だね」
「仕方がないですよ。放置気味にした罰です」

そういいながら軽蔑の表情でぼくを見下ろしたYと岡村を、ぼくは完全にスルーすることに決めた。
そのまま、男女二人組のご訪問者が誰であるか、頭の中で候補を絞っていく。

だが、やはり。
依然として目星がつかなかった。
一体、誰なんだろう……。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉