新着情報

たとえ離れていても 3

なんにしても、だ。
せっかくご訪問頂いたのに、いつまでも待たせるのは悪い。
思い出す作業に観念したぼくは、なにかヒントになればと、岡村にさらなる情報を求めた。

「そのお二人を、代表がお見かけした記憶は?」
「うーん……ないなあ……」

となると、ますます分からなかった。
メビー・ラックには複数のスタッフがいるとはいえ、代表をはじめとする全スタッフが、パートナーをつとめさせて頂いている飼い主様のお顔を忘れるはずがない。
人が行き交う街中や道を挟んだ向こう側の道であろうとも、すれ違ったりお見かけしたりすれば、必ず気づいてお声かけさせて頂き、たわいもない会話を弾ませることが常である。
お連れになっているペット様もこちらに対してはしゃいでくれたり、ばったり出会った喜びを爆発させてくれたりすることも多い。

そういうわけで。
ご訪問者のお二方は、これまでに面と向かってお会いしたことがある飼い主様ではないと、私は一応の結論をつけた。

「それで、代表。お二人のお名前は?」
「W様」

岡村から告げられたお名前を頼りに、私は記憶の再起動を試みた。

……W様。
W様……。
お二人……。
……んっ! まさかっ!

やっとのことでピンときた私を見て、岡村が首を傾げる。

「どなたか、思い出したの? もしお会いしたことがあるお二人だったら、思い出せなくて失礼なことしちゃったなあ……」
「いや。思い出すもなにも、ぼくを含めたメビー・ラックのスタッフ全員、W様に直接お会いしたことは一度もないから、お顔の記憶が残ってなくても仕方ないよ」
「……え? どういうこと?」

岡村と同様、はてなマークの表情のまま固まっているYに、お泊り中の犬様をぼくは手渡した。

「少しの間、このこ、お願い」
「は……はい」
「それから、代表。シッターの時間、平気?」
「えっと……うん。まだもう少し大丈夫」

お泊りの犬様は、当然ながらW様とは初対面となる。
万が一、ストレスになってはいけないし、もしかしたら、W様たちが犬様を苦手としているかもしれない。
それに、今日は滞在している猫様はいない。
よって、ぼくは岡村にこういった。

「じゃあ、W様たちを4階にお通しして。ぼくも直ぐに行くから」
「わかった」

しばらくすると、4階の猫様専用ペットホテルスペースにW様たちをご案内する岡村の声が、ドア越しに聞こえた。
それに応えて、『ありがとうございます』というW様(男性の方)の声がする。

この声は、うん。
間違いない。
ぼくは一人、笑みを浮かべた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉