警戒の目を周囲に配ると、
・400mトラックを走っている複数の人
・400mトラックの周囲に設置されているベンチに腰を下ろす人
・二匹の犬様とその飼い主様がいる場所よりも、もっと奥の中央芝生の中で、何やら戯れている若者たち
・400mトラック外側の歩道を、自転車や徒歩で行き交う幾人
などの姿が確認できました。
この瞬間に至っては、私が連れている中型犬様と400mトラック内側の中央芝生の遠目にいる二匹の犬様以外、周囲にほかの犬様はいなくなっていました。
この状況を鑑みて、連れている中型犬様に私はいいました。
”……とりあえず様子見をしたいから、まだ動かないでおこう”
中型犬様はアイコンタクトで了解を示してくれ、そのままじっとしていてくれました。
私はそんなふうに待ちながら、中央芝生の遠目にいる犬様二匹とその飼い主様の動向に注意を向け続けていました。
すると、そのまましばらくした後のことです。
遠目かつ夜が故に、何がきっかけだったのかまでは分かりませんでしたが、二匹の犬様が急に小走りを始めました。
驚いたことに、その距離はぐんぐんと延びていきます。
とはいえ、です。
この時点では、フレキシブル・リードと呼ばれる伸縮性のリードやロングリードで、犬様が繋がれている可能性も考えられました。
しかし、不安は拭えませんでした。
私の目が捉えた飼い主様は、相変わらずスマフォらしきものに夢中だったからです。
下を向いているその顔は、ぼんやりとした明かりに照らされ続けていて、この期に及んでも、犬様二匹の動きに気づいていないようでした。
瞬間的に嫌な予感が降ってきた私は、走っている二匹の犬様に目を戻し、その動きを注視し続けました。
……もしや……。
嫌な予感は的中し、私の警戒レベルは瞬時に最高潮に達しました。
走り続けている犬様二匹と飼い主様の距離間や、走り回る動線から判断するに、フレキシブル・リードにもロングリードにも、犬様は繋がれていないことが分かったからです。
しかも、です。
私が今いる位置からはまだ距離があるとはいえ、走り回っているその犬様二匹は、少なく見積もっても中型犬様以上の体格を有していることが確認できました。
そんな二匹が興奮気味に、中央芝生を自由に走り回っているのです。
即刻、この場から退避するべきか……。
けれども、下手に動けば、走り回っている犬様二匹に気づかれるかもしれない……。
とにもかくにも、連れている中型犬様の安全確保が最優先であることに疑いの余地はありません。
その大前提を守るためにはどうするべきなのか、私は必死に考えました。
〈続く〉
あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように
富山桃吉