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なぜですか!? 3

最大の警戒心を突然に発動させて最善策を模索している私の様子を、敏感に察知したのでしょう。
連れている中型犬様が、不安そうに私をじっと見上げてきました。

”大丈夫。何があっても、守ってあげるから!”

いいながらしゃがみ込み、笑顔で身体を撫でて言葉をかけましたが、完全には誤魔化しきれません。
むしろ、中型犬様の目には、私のことを心配してくれているような色までもが浮かんできました。

その時です。
どこからともなく、携帯電話の着信音が聞こえてきました。
着信音が鳴っている場所を直ちに探ると、どうやら、400mトラックを走行してきた自転車から鳴っているようです。
その自転車にはサラリーマンが乗っていて、そこそこの速度で走行していました。
それにもかかわらず、サラリーマンは走行速度を落とさぬまま、電話を手に取り、応対をし始めました。

”危ない真似を……”

私がそう思った矢先です。
サラリーマンが乗った自転車が、案の定ふらつきました。
その動きに伴い、自転車が照らしていたライトも揺れ、地面には、左右に大きく動くその灯りが踊りました。

すると間もなくして、中央芝生を自由に走り回っている犬様のうちの一匹がその灯りに反応し、ピタッと立ち止まりました。
続けざま、踊る灯りをロックオンする動作を取り、姿勢を低く構えています。

一方、サラリーマンが乗った自転車は、私と中型犬様がいる方向に走行を続け、電話をしながら走り去っていきました。

このままでは、まずいっ!

瞬間的に焦った私は立ち上がって、中型犬様を繋いでいるリードを引っ張り、合図を送りました。

”立って!”

私の緊迫感を承知した中型犬様は、すっと立ち上がりました。
それと同時に、中央芝生で低く構えていた犬様が吠え、その途端、こちらに向かって駆け出しました。
つられて、中央芝生をウロウロしていたもう一匹の犬様も、私たちの存在に気づいたようです。
すぐさまこちらに顔を向けると、一直線に走り出してきました。

この時点においても尚、二匹の犬様の飼い主様はスマフォいじりに夢中でした。
これでは、二匹の犬様の制御は期待できません。

”ダメだ。行くよ! おいで!”

連れている中型犬様を退避させるべく、私は急ぎ足で歩き出しました。
一気に走って逃げなかったのは、こちらに駆け寄ってくる二匹の犬様を悪戯に刺激したくなかったからです。
興奮状態の犬様二匹の様子から判断するに、走れば追いかけてくることは容易に想像がつきました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉