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サンタクロースからの贈り物 1

「そろそろお散歩に行こうか」
「くぅーん!」

数日前からご宿泊しているワンちゃんの散歩に出掛ける準備を始めた時だった。
夕陽が店内を茜色に染める時刻の着電に、事務仕事の最中だったスタッフYが対応する。

「お電話ありがとうございます! メビー・ラックです!」

間もなくして私にしかめっ面を向けたYが、電話をしながらメモ帳にペンを走らせる。
メモ帳を覗くと『迷子犬』と書かれていた。
またか……。
瞬時に、緊張が身体を縛った。
というのも、別件で、つい数日前から迷子猫の無料相談電話を受けているからだ。
そちらの飼い主様は、迷子ペット捜索のプロである私から見ても感心するほど頑張って捜索をなさっておられる方だった。
加えて、私からのアドバイスを忠実に実行しておられる。
にも関わらず未だ保護には至っていない。
失意の中、もどかしさと心労を重ねておられる飼い主様??
今、Yが対応している電話の相手もおそらくは似たような状態であろう事は容易に想像できた。

「ごめんね、お散歩はもうちょっと待ってね」
「くぅーん」

大人しくて賢くて甘えん坊なお泊りワンちゃんは静かに私の膝の上で丸くなった。

「……わかりました! 至急、上の者に報告した後に折り返しお電話致します!」

電話を終えたYがメモ書きを私に差し出してきた。

「迷子犬ですって! どうしましょう!?」

と言われても、メモ書きには結局『迷子犬』としか書かれていないので詳細を尋ねた。

「どうするもこうするも……迷子犬の捜索ご相談?」
「そうです! だけど、そうじゃないです!」

はああ……。
生真面目なYらしいといえばYらしいが……。
緊急事態に直面すると気持ちが先走って結論を急ぐ癖があるので、会話の始めの段階ではいつも肝心の詳細が把握できない。
私は一呼吸して、一から尋ね直した。

「えっと、電話のお相手はどなたから?」
「はい! M動物病院の院長先生からです!」

午後の診療でお忙しい時間だろうに、一体どうしたのだろうか……。
はっ!
まさかっ!
親切で評判の高いM動物病院なのに!?
けれど確かに、メモ書きには迷子犬と書かれている……。
という事はもしかして!
もしかして!!
もしかして!!!
お預かりのワンちゃんを逃がしてしまったとか!!!!
過去、私共に捜索ご依頼を頂いた中には、実際に動物病院が逃がしてしまったケースがあった。
無論、あってはならない事態であるし、飼い主様方は驚かれると思うが、ペットシッター・ペットホテル・トリミング店を含め、ペットに関するプロにも関わらずお預かりしているペットを逃がしてしまう業者は残念ながら少なくない。
それにしても、M動物病院に限って……。
私は息を呑み、Yの目をまっすぐ見て聞いた。

「院長先生、なんだって?」
「はい! それがですね……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉