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サンタクロースからの贈り物 5

「Tさん、まだ来ていらっしゃらないみたいだね……」

私の呟きに軽く頷き、Nは時計を見た。

「時間が勿体ないから、ちょっと一本向こうの道を一周してくるわ。すぐ戻る」

チラシ・ポスターの確認に駆け出したNの背中はあっという間に小さくなった。
その後ろ姿を見ながらふいに思い出す。
Nからペット様捜索の同行研修を受けていた初期頃の事だ。

ペット様捜索のご依頼は春夏秋冬に関係なく入ってくる。
早朝であろうが深夜であろうが、雨だろうが雪だろうが、猛暑だろうが極寒だろが、必要とあらば時間も問わず捜索を実施する。
正に体力勝負と言っても過言ではない。
私は研修当初の真夏、自分の体力に見合った捜索ペースを誤って熱中症にかかってしまい、捜索途中で無念の休憩を強いられた事があった。
当然の如く、Nからはきびしい叱責を受けると覚悟した。
それは自業自得なので仕方がないが、なによりも迷子ペット様や飼い主様に申し訳なくてひどく落ち込んでいた。

「とりあえず、体調が回復するまで休んでろ。飼い主様には連絡入れとくから」

私はNの指示に従い、エアコンを効かせた車内で休む事となった。
Nが買ってきてくれた熱中症対策用ドリンクを飲み、アイスノンで身体を冷やす。
呼吸を整えていると、迷子ペット様捜索についてNから初めに教わった言葉がクラクラする頭の中に響き渡った。

『体調管理が出来ない事=迷子ペット様の命に関わる事=飼い主様の不安を募る事』

その言葉は激しい頭痛よりもよっぽど痛かった。
飼い主様に電話で事情を告げた後、Nは流れる汗を拭いながら車内の私に言った。

「飼い主様からの伝言。『自分のペットでもないのに、熱中症になってまで一生懸命に捜して頂いて本当に感謝致します。先ずは安静にして下さい』だと」
「本当にすみません……」
「マジでやばそうだったら救急車呼ぶから直ぐ連絡しろ。研修中が一人いなくても捜索に支障ないから気にすんな。じゃ、時間が勿体ないから行ってくる」

駆け出したNの背中はあっという間に小さくなった。
その後ろ姿を思い出したのだ。

Nはあの頃から何も変わっていない。
酸いも甘いも噛み分けてきても尚、自分が出来る範囲で迷子ペット様や飼い主様のパートナーとしてただひたすらに捜し続けている。
その姿勢は俗に言う営利目的だけの『ペット探偵』とは違う。
N自身が名付けた通り、私達は『迷子ペット捜索パートナー』である。
だからこそ、私が熱中症になったあの日も飼い主様からはあたたかいお言葉を頂けたのだ。

「飼い主様がメビー・ラックをパートナーだと認めてくれたからです」

迷子ペット様を無事に発見・保護したNが、涙する飼い主様に告げた言葉は、熱中症から回復途中の私の身体にとって一番の良薬となった。

しばしの間懐かしさに浸っているとNが小走りで戻ってきた。

「あっちの道にもチラシ・ポスターはなかった」
「そっか……」

互いに考えを巡らせていると、私の携帯が鳴った。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉