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サンタクロースからの贈り物 6

「Tです。もう着いていらっしゃいますか?」
「はい。マンションの前にいます」
「どこだろう……あ、もしかして。今すぐ行きますのでそちらでお待ち下さい」

Tさんはそう言って電話を切った。
Nはゆっくり瞬きした。

「Tさん?」
「そう」
「なんだって?」
「すぐ来るって」

言った直後、マンションの出入り口から一人の男性が歩いてきた。
寒空にボーダーコリーを連れてくるのもかわいそうだったので、お部屋でTさんの奥様と待機していて欲しいとお願いしてある。
私は名刺を取り出し挨拶した。

「Tさんですか?」
「はい。はじめまして」
「はじめまして。こちらはうちのスタッフのNです」
「Nです。こんばんは」
「こんばんは」

丁寧な物腰のTさんは絵にかいたような真面目な方だった。
挨拶がてらにメビー・ラックの事業説明等をお伝えし、その一つであるペット捜索を行っている旨を伝えたところで、Tさんの表情がわずかに強張った。

別に、そういった反応は珍しくはない。
世にある『ペット探偵』のイメージが芳しくない故、はじめてお会いする時は大抵が訝しんでおられる。
ご依頼に至っても尚、いざ捜索実施前のヒアリング時点では「ペット探偵なんて眉唾ものだ」「本当にちゃんと捜してくれるのか?」「詐欺じゃないのか」等の印象を持たれる事は常である。
それは致し方ない。
私自身だってあるきっかけがなければ『ペット探偵』の存在なんて知らなかったし、知ってからも、憤慨する現状ばかりだからだ。
中には親身になって捜索なさる方もいらっしゃると思う。
が、やはりそれは一握りであろう。

『ペット探偵』をうたう業者のホームページにはもっともらしい事が書いてあるが、たとえ動物取扱業の登録番号が記載されていたとしてもそれはお金を払って講習を受けただけに過ぎないので、当然の如く肝心の動物に対する知識と経験に乏しい。
業者からしてみれば、ただ単に依頼を釣るエサとしての動物取扱業の登録番号という認識なのだ。

電話の問い合わせ時点では丁寧な口調だが、実際に会ってみると容姿や服装に問題があったりするのもザラだ。
実際に捜索を実施するのは人間であり、情報提供をして頂ける方も人間である以上、コミュニケーションをはかる上では最低限の清潔感や常識は必須であるのに無精ひげで現れたりする。
歩き続ける体力が備わっていなければならないはずなのに、一目で歩いていないと分かる肥満気味だったり下っ腹が出てる人間もいる。
見栄を張る為に従業員の人数を実数よりも多く言ったりする業者もあるそうだ。
本人は声を変えているつもりなのだが、飼い主様はそんなにバカではない。
責任逃れ要員の架空の人物で対応するというムダな時間と努力をしてる暇があったら、一歩でも多く歩いて捜せと言いたい。

責任重大な捜索人を一般求人誌で募る業者も信用できない。
応募資格:動物が好きならOK!?
冗談じゃない。
迷子になっているペットの命を軽んじすぎだ!!!
中でも最悪なケースは、現場捜索研修を一日も経験した事がない素人にキャリアの虚偽や偽名を使わせて派遣したりもする。
宿泊を含む多額な費用を飼い主様にご負担頂くご依頼にも関わらずだ。
当の本人は動物想いのやさしい人間が故、藁をも掴む想いでご依頼なさった飼い主様にウソをつき続けなければいけないから良心の呵責を感じるし、捜索の仕方すらままならないのでさらに心を痛める。
こうなると、飼い主様・迷子ペット様・当の本人、みんなが不幸である。
ただ一人、延長料金を含めて私腹を肥やした業者幹部を抜きにして!!!!!

悪徳業者はとにかく悪知恵だけは働くし口達者なのがまた厄介で、捜索実施日・実施時間・捜索範囲においては自分達の偏った理屈や自分達に都合のいい事ばかりを押し通す。
あげく、捜索延長依頼が入らないとみるや、それらに疑問を挟む飼い主様を罵倒する輩までいる。
ウソの目撃情報をでっちあげて捜索の延長を迫る業者がいると聞いた事もある。

飼い主様が捜索に同行するのを拒否する業者も多い。
理由は簡単だ。
サボレナイカラ??
ラクシテカセギタイカラ??
ウソガバレルカラ??
メンドウクサイカラ??

目に見える範囲だけにポスターを掲示し、実数の定かではないチラシをポスティングするだけでプロと自負するそれらの業者。
Tさんも少なからずそういった『ペット探偵』情報を得ているらしく、私達を訝しんでおられたのだろう。
だからこそNはTさんに告げた。

「私達は『ペット探偵』ではなく『ペット捜索パートナー』です」

そう言われても、Tさんに違いが分からないのは言わずもがなだ。
私は携帯の待ち受け写真をTさんに見せた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉