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サンタクロースからの贈り物 8

Nは私を一瞥して提案した。

「今の時点で迷子ボーダーコリーの飼い主様がどこに住んでいるか断定できない。それにしたって飼い主様を見つけ出すのが一番だと思う」

異議はなかった。
上手くすれば、動物愛護関係で里親を見つけて頂ける可能性もあるだろう。
けれど、本格的な飼い主様捜しをしない内にその手段を取るべきではない。
迷子ペット様が里親先に知らぬ間に譲渡されてしまった場合、飼い主様からしてみれば永遠の行方不明になってしまうからだ。

「そうならない為にも、迷子ペット様を預かっている旨を飼い主様の耳に届ける事が重要なんです」

Tさんを説得するNに私は確認した。

「飼い主様見つけられると思う?」
「見つけられるっていうか……見つかる気はする」

Nの言葉には確信めいた色味が滲んでいた。
ポスター・チラシが貼ってない事、毛並みが悪くて所々毛玉になっていた事、体臭がきつめだという事、保護後に水をかなり飲んだとの事
、食事はペロリとたいらげたが下痢を起こしている事、それらは迷子になっていた期間や迷子になった場所からの距離を割り出す一つの指標になる。
状況に照らし合わせて推測すれば、一見すると今回の場合は迷子期間が短くないように思われた。
けれどNは目に見える指標以外にも『ナニカ』を感じているようだった。
その『ナニカ』を信じられるいくつもの結果を実際にこの目で見てきた私としては、Nの提案に反対する理由はない。

「Tさん、迷子ボーダーコリーの飼い主様を私達に捜させてもらえませんか?」
「それは構いません。たださっきも言った通り、家はペット不可なのでいつまでも犬の面倒を見続けられないんです……」
「その事なら心配ありません」

Nは言いながら、自分の携帯画面を見せた。
ワンちゃんからのペロペロ攻撃にさらされながら、したり顔でオッケーサインをかざすYが写っている。

「飼い主様が見つかるまで、スタッフの実家で責任もってお預かりさせて頂きます。犬からは好かれるタイプなのでご心配なく」

Nの段取りはいつも迅速かつ正確だ。
いつのまにか、Yのスケジュールの合間を自分が補う約束で話をつけたらしい。
Tさんは声を弾ませた。

「助かります! では早速部屋に戻って、妻と相談してみます!」

マンションの中に駆け出そうとするTさんをNが慌てて止めた。

「あ、ちょっとお待ちを!」
「はい?」

Nはゆっくりと瞬きをしてから言った。

「迷子ボーダーコリーの写真を見せてもらえますか?」
「あ、ちょっと待って下さいね」

Nの要望は予め私が電話で告げていたので、Tさんは携帯に保存した迷子ボーダーコリーの写真をすんなりとピックアップして見せてくれた。

「これです」
「失礼致します」

写真を目にしたNが瞬時に眉を寄せた。
不思議に思って、私も脇から写真を覗き込んだ。
あ……れ……。
声になるかならないかで漏らした途端、Nは目線で私を制した。

「Tさん、差し支えなければ犬の写真をもらってもいいですか。飼い主様捜しの手がかりにしたいので」
「はい。どうぞ」

TさんはNの携帯に写真を転送した。

「ありがとうございます、Tさん」
「じゃあ、妻と相談してきますね」

小走りでマンションに消えて行くTさんを見送ると、Nがこちらを向いた。

「直ぐにM動物病院にも伝えた方がいい」

同感だった。
Tさんから見せて頂いた犬の写真がボーダーコリーではなかったからだ。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉