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サンタクロースからの贈り物 12

「どうかしましたか、Tさん?」
「あの……電話があったんですよ。迷子犬の飼い主って人から……」
「はい!?」

吃驚仰天した私に、Nが口パクに近い声量でゆっくり尋ねてきた。

「ど・う・し・た・?」
「か・い・ぬ・し・さ・ま・か・ら・で・ん・わ・!」

Nを真似て返答してみせたが、上手く通じなかったらしい。
溜息をついたNは白けた表情を浮かべた。
電話しながらだと難しいっつーの!
言い訳をかましたい気持ちがあったが、一先ずは気を取り直してTさんとの電話に集中する。

「なんと仰ってるんですか?」
「今から犬を引き取りに行きたいと……」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さいね」

Tさんとの会話内容を伝えたら、Nが電話を代わった。
やにわに登場した飼い主様を名乗る電話相手の対応に、Nは慎重を期すべきだと提案した。
私にも状況が分かるようにと、Nは得意顔で携帯電話をスピーカーモードに切り替えた。
はっ、その手があったか!
なんか悔しくて赤面していると、狼狽を隠さないTさんの声が携帯電話から漏れてきた。

「慎重を期すって……な、なにか不味い事があるんでしょうか?」
「例えばこんなケースがあります。飼い主様を名乗る別人が、迷子犬を盗難する目的で電話をかけてきてる場合です」
「なるほどですね……」

多くは転売目的である。
かなしいかな、そういった怪しい目的で電話を受けた飼い主様のケースも過去にはあった。
その時は対応を代わったNの機転で事なきを得たのだが。

「見返り目当ての第三者の場合も厄介です」
「どういう事ですか?」

迷子ペットのチラシやポスターには、往々にして『謝礼金』やら『薄謝』などの記載がある。
家族同様の存在である迷子ペット様をどうにかして見つけたい。
飼い主様の切迫した想いの現れとも言える。

けれども、その想いを逆手にとる悪い輩もいる。
当に迷子ペット様を保護しているにも関わらず、協力者に扮して白々しく飼い主様に電話を入れる手口だ。
親切ぶったアドバイスや言葉をかけながら、飼い主様が『謝礼金』や『薄謝』の値上げを決断するの待つ。
頃合いをはかり、いかにもたった今保護したかを装って『謝礼金』や『薄謝』で懐を肥やすたくらみだ。
私達が捜索パートナーを務めた以前の案件で、こういったケースも経験済みだった。

はじめて聞く話に相槌を打ち忘れているTさんを気遣い、Nが声色を和らげた。

「まあ、他にもいくつか理由が考えられるのですが、もちろん本当の飼い主様だという可能性も否定はできません」
「どうやって判断すればいいでしょうか。正直、どうしたものか見当もつきません……」
「一つ確認です。電話をかけてきた相手は、なぜTさんの電話番号を知っていたのでしょうか?」

言われてみればそうだ。
まだポスターやチラシを配布しているわけではないのに、なぜだろう……。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉