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サンタクロースからの贈り物 13

Tさんも思い迷った返答をした。

「たぶんですが……行政の人が教えたのだと思います」

本当の飼い主様かどうかの確認がおろそかなうちに個人情報をもらす行為には不信も残るが、おそらくはそうだろう。
本当の飼い主様だったとしたら、ようやく迷子犬の届け出をなさったと解釈できる。
一体どちらなのだろうか……。

Nの質問は続いた。

「それで、電話相手のお名前は?」
「あ、そういえば名乗っていません……」
「男性でした? 女性でした?」
「女性です」
「声の感じは、若そうでしたか?」
「うーん……特段若いという感じはしませんでした。比較的落ち着いたやりとりでしたので」
「そうですか」

落ち着いたやりとり?
取り乱し過ぎるのもなんだが、もしも自分の愛犬が迷子になっていて、ようやく居所が分かったかもしれないという状況の飼い主様の反応としては薄い気がする。
あるいは、脱走癖があるとそんなもんなのか……。
急ピッチで自問自答を繰り返している私をよそに、Nは余裕を見せた。

「まあ、その人と会えばわかりますね。色々と」

Nは面会に同席を希望する気だ。
眼光が鋭さを増した。
一方のTさんもその気だったらしく声が上ずっている。

「一緒に会ってくれるなら心強いです」
「では、先方に折り返してください。犬が幼い頃の写真を持参して、先程と同じ場所で待ち合せましょうと。こちらも直ぐに向かいます」
「わかりました」
「念の為、犬は帯同せずにTさんお一人で来てください」
「あ……はい」

Nの思惑は明らかだった。
実際に迷子犬と会わせる前に、写真を証拠として提出させるつもりだ。
仮に疑わしい相手が現れて自分の犬だというウソの主張をしてきても、突っぱねる材料になる。
はたまたヤバイと察知して、待ち合わせ場所に現れないかもしれない。
本当の飼い主様じゃないのだとしたら別に構わないが??
ともあれかくもあれ、犬に降りかかるかもしれない災難を回避する為ならば、どんなときも冷静で用意周到なN。
見習いたいものだ。

ややあって待ち合わせ場所に着くと、Tさんは先に待っていた。
電話相手はまだ現れていないようだ。

「待ち合わせ時間まであと三分……」

呟いたNはさりげなく、けれど手堅く周囲を注視している。
感化を免れず、Tさんもどことなく身構えている。
気持ちはわからなくもない。
行き交う人達をこうして見ていると、なにもかもが怪しく思えてくるものだ。

一分が経ち、二分が経った。
まだ現れない??
三分が経ち、四分、五分……あれよあれよと十分が過ぎた。
それでも現れない??

さすがに、私とTさんの緊張感は緩んだ。
その時、Nが口を開いた。

「やっぱりな……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉