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サンタクロースからの贈り物 14

なにがどう『やっぱりな……』なのか。
Nの考えが言葉に変容して声になりそうな刹那、Tさんが口を開く。

「電話、入れてみますか?」
「どうやらその必要はなさそうですよ。ほら、あちらに」

Tさんも私も、Nが促した方向を見た。
二つの買い物袋と手提げバックを持った一人の女性がこちらに向かって歩いてくる。
Tさんは携帯を強く握りしめながら、再度Nに確認を求めた。

「あの女の人……ですか?」
「はい。間違いないと思います。あの人が待ち合わせ相手でしょう」
「どうして分かったのですか?」
「あの人、さっきもここを通り過ぎましたから」
「気づかなかった……」
「さっき通った時よりも買い物袋が一つ増えてますからね」

思わず『そこじゃねーし!』とツッコミを入れそうになったが止めた。
Tさんはきっと、女性が一度通り過ぎた事に対して『気づかなかった』と言ったはず。
買い物袋が一つ増えた事以前の問題だ。
まあどちらにしても、買い物袋が一つ増えた事に気づいたNの洞察力はさすがだと感心する。

「おそらく、増えた買い物袋の正体はTさんへのお礼品でしょう。それを買いに行っていて待ち合わせ時間に遅れたのだと」
「お礼品なんていらないのに……」

頭をかく仕草をしながら困惑顔のTさんに、Nはにこりと笑顔を投げた。

「さておき。ではTさん、どうせならこちらから女性の方へ近づきましょう」

Nが言ったと同時に、緩んでいた私とTさんの緊張感がピンと張った。
あの女性が本当の飼い主様かどうかの確証はまだないからだ。
もしかしたら、既に屈強な仲間が物陰に潜んでいて、鋭くこちらを見張っているやも分からない。
迂闊にこちらから近づいていったら、異変を察知した女性と仲間が逃走をはかる可能性だってある。
ともすれば仲間連中と小競り合いになるのではないだろうか……。
ぐるぐると駆け足をする懸念に負けないように、私は携帯のロックを解いて万が一が起きた際に備えた。
これでいつでも警察に通報できると自分を落ち着かせる。

「女性への話かけと、最初のご挨拶だけよろしくお願いします」
「は、はい! そ、その後はNさんにお任せしますので」

NがTさんの背中に手を当てて返事をしたのを合図に、私達は女性に向かって歩き出した。
こちらに気づいた女性が立ち止まった。

「Tさん、落ち着いて」

小声で助言するNがTさんの背中をさする。
さながら効果音のように唾を飲み込む音がして、Tさんが女性に話しかけた。

「こ、こんばんは。Tです。犬の飼い主さんですか?」

途端、狐疑する女性が無言で後退りしたのをNは見逃さなかった。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉