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サンタクロースからの贈り物 16

「うちの犬はどこに……?」

女性が一番に気にかけているのは迷子犬の事なので、当然と言えば当然の問いだ。
意図的にゆらりと頷くだけのNを見つめたTさんが何かを喋ろうとした。
すかさず、Tさんを遮るN。

「ワンちゃんは大丈夫ですよ。今、暖かい部屋で休んでいます」
「お気を遣って頂いて」
「万が一お捜しのワンちゃんと別の犬だとしたら、この寒空の下に連れてくるのもかわいそうですしね」
「あ……そうですよね」

口を噤む女性の顔には不安と困惑が入り混じった表情が浮かんだ。
無条件で自分の犬だと思い込んでいたのだろう。
ただ、Nが言った通り別の犬だという可能性を完全否定できない故、言葉が出てこないといった感じだ。
そんな女性に向かって、Nは柔らかい口調で語りかけた。

「御引き渡しの前に、ワンちゃんの事でいくつかお伺いさせてもらってもいいですか? 仕事柄、本当の飼い主様かどうかの確認癖がございまして」
「はい。遠慮なくお聞きください。違う迷子の犬だったら、そちらの飼い主様もご心配なさっているでしょうし」
「そうなんです。ご理解頂きありがとうございます」
「いえいえ」
「このご時世、いろんな人がいましてね。例えば、動物虐待を目的に迷子犬の譲渡を目論む輩ですとか……」

女性は息を呑んで一瞬黙った。
その後、慌てた様子で続けた。

「あ、でもですね、子犬の時の写真が見当たらなくて…………」

子犬の写真がない?
私には『はいそうですか』と受け入れるのは難しかった。
この女性も決してお年を召された方ではない。
犬の飼い主ならば、愛犬の写真の一つくらいは持っているのが大方だ。
ましてや今の時代、携帯で気軽に写真を保存できるのに?

引き続き口ごもる女性に詰問するN。

「写真の件、Tさんとの電話でお約束して頂けましたよね?」

Tさんは無言で頷いている。
女性はやっとこと動揺を整理してNに主張した。

「すみません。犬が保護されていると知って、嬉しくてホッとして、慌ててたもので。もっとよく家の中を探せば見つかるとは思うんですけど……」
「そうですか」
「お待ちして頂けるなら、今すぐ探しに帰ります。本当の飼い主だと証明できなければ……ですものね」

すがるような目で訴える女性をじっと見ているN。
と思いきや、今度はにっこりと答えた。

「わかりました。写真は結構です」
「本当ですか!?」

いいの!?
本当にいいの!?
ねえ、N!?
写真無しで、本当の飼い主様かどうかどうやって判断するの!?

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉