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サンタクロースからの贈り物 19

「ワンッ! ワンッ!」

感激の女性がワンちゃんについてのべつ話していると、マンションの中から元気のいい鳴き声が聞こえてきた。
もうすぐ感動の再会場面だ。

けれど、こういう時こそ注意が必要である。
ワンちゃんも飼い主様も再会に高ぶるであろうから、不測の事態も起きかねない。
Nは素早く周囲に目を配り、歩行者・車・自転車等が迫っていないか安全確認を行った。
さりげなく、私は女性に寄り添う。

「ワンッ! ワンッ!」

段々とワンちゃんの鳴き声が大きく聞こえてきた。
追っ付け、ワンちゃんの姿が目に入る。
ワンちゃんの方も飼い主様の姿を認めた。
瞬間、Tさんを引っ張りながら逸散に女性を目がけようとしたので、Nが申し出た。

「Tさん、ワンちゃんが勢いよく駆け出す危険があるので代わります」

NはTさんの奥様に軽く会釈して、Tさんが握っていたリードを手に取った。
継いで、ワンちゃんの横にしゃがみこんで嘆願する。

「どうもはじめまして。飼い主様に会えて嬉しい気持ちはわかるんだけど、ゆっくり飼い主様の近くに行こうぜ。だって、ケガして欲しくないんだ。キミにも飼い主様にも」

ワンちゃんは尻尾を振ってお座りをした。
その光景にくぎ付けになっている女性に、私は語りかけた。

「飼い主様もしゃがんで待ってあげましょうか」
「はい」
「ワンちゃんがこちらまで来たら、たくさん撫でてあげてください。迷子にさせてごめんねって。会いたかったよって」

女性はもはや言葉を発するのも難しいほどしゃくりあげながら頷き、私の腕をつかんだ。
それを待って、Nはもう一度安全確認を行い、ワンちゃんを促す。

「よし、行こう」

ゆっくり。
ゆっくり。
飼い主様とワンちゃんの距離が近づく。

そして??
とうとう、飼い主様とワンちゃんは互いの体温を確かめ合える喜びを享受した。

「今日はクリスマスイブだから、うちの子ども達がサンタクロースにお願いしてたんです。今年のクリスマスプレゼントは、この子が帰って来れる事にしてくださいって」
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別れ際。
飼い主様は私達にそう仰った。

「サンタクロースって、動物にも大人にもプレゼントをくれるんだなあ」

Nは呟くと、聞き込み相手やM動物病院へ無事解決の報告と御礼参りに向かった。

私はかじかんだ手を擦り合わせながら店に戻った。
店内では、Yとお泊りのワンちゃんが玩具のぬいぐるみを引っ張り合いっこして遊んでいた。
ほかにご宿泊のみんなは、スヤスヤと眠っていた。

この瞬間の一つ一つが、みんなの命の一つ一つが運んでくれるやさしい時間。
その全てが、サンタクロースからメビー・ラックへの贈り物。

ああ。
なんて贅沢なクリスマスプレゼントなのだろう!

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉