クリスマスイブから二日後の昼過ぎ、T様からお電話を頂いた。
「お忙しいところ申し訳ございませんが、お店の方に伺ってもよろしいでしょうか?」
「もちろん構いません。お気をつけていらっしゃってください」
お泊りのワンちゃんと戯れているNにもT様からの申し出を伝え、ご来店を待った。
約束の時間ぴったりに、奥様を連れたT様と再会する。
開口一番、お二人が謝意を表された。
「こんにちは。この度はお世話になりました」
挨拶を交わしながら私も頭を下げる。
「そんな、そんな。T様がワンちゃんを逃がしてしまったわけではないですし」
「むしろ、あのワンちゃんが無事に飼い主様の元へ帰れたのはお二人が保護なさったおかげなのですから、どうか頭をお上げください。こんな態勢で言うのも失礼な話ですが……って、ふがごもおっ」
私の言葉に付け足したNは今、寝そべっていて、お泊りワンちゃんがお腹の上に乗っかっている状態だ。
喋っている途中、ペロペロ攻撃を口元に受けたNを見て、T様ご夫妻は微笑みを浮かべている。
私はお二人をソファーにご案内した。
「すごく陽当たりが良いですね」
「そうなんですよ。晴れていれば、冬場でも夜まで暖房がいらないくらいで」
「ここなら、犬や猫も日向ぼっこでくつろげますね。預ける人からしたら、スタッフの方が二十四時間常駐っていうのも安心でしょうし」
T様の奥様が仰った事は、実際にメビー・ラックをご利用頂く飼い主様からの声でもあった。
うちのお店は四階なので、人目にさらされる路面店とは違ってワンちゃんネコちゃんのストレスが少ないとご好評だ。
お二人にお茶を出したタイミングで、T様から紙袋を受け取った。
「つまらないものですが、この度の御礼です。どうぞ」
洋菓子だ!
「わあっ! うちのスタッフはみんな甘党なので奪い合いですよ。ありがとうございます」
それから小一時間の歓談は意義深いものだった。
中でも、動物愛護関係の活動をなさっている奥様のご実家の話は感銘を受けるものばかり。
普段からペット様達のお世話をにさせてもらっている私達としても、あらためて身を引き締める思いとなった。
それもあってか、会話の果ては昨今のペット飼育事情にテーマを移した。
今はペットと暮らしていないT様ご夫妻。
だからこそ抱く素朴な疑問の一つ一つには現実味があって、実に興味深かった。
話題にのぼった話の中には、今回の迷子ワンちゃんの件とも無縁ではない事柄も含まれる。
それらについて、私達とT様ご夫妻の会話はこうだった。
〈続く〉
あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように
富山桃吉