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サービスエリアの空の下 121

私が目指す、二階建ての古びた木造住宅には、すぐに到着した。
あえて距離を空けた手前で車を降り、玄関に向かう。

玄関へと歩いている途中、この家のベランダが見えてきた。
ベランダは草むら側に面していて、そこにはだいぶ錆びついている物干し竿台が見えるが、なにも干されてはいない。
ベランダ周りには、雑多な荷物が散らかっていて、そのどれもが、ここ数年のうちに使用された形跡はなさそうだった。

じきに、玄関に辿り着く。
玄関前には、いくつかの植木鉢が並んでいた。
どの植木鉢も手入れがされていて、それぞれに花が咲いている。
植木鉢のこの手入れ状態から、この家の住人がお世話をしているのは間違いないだろう。
どうやら、空き家ではなさそうだ。

けれども、玄関周りには、表札を確認できなかった。
郵便受けはあるのだが、玄関の壁に埋め込むタイプの簡易的なものなので、そこにも家主の名前表記を見つけられなかった。

私はインターフォンを押した。
そのまま待つこと30秒。
建物の中からの応答はない。

……留守……かな?

念のために、インターフォンをもう一度押す。
それだけではなく、玄関に向かって声もかけた。

「ごめんくださーい! お留守ですかー!?」

再び待つこと30秒。
だがやはり、建物の中からの応答はない。

……留守……みたいだな……。

仕方がない。
私は踵を返し、車に戻ろうとした。

その時。
久しぶりに、鈴音が聞こえてきた。
聞こえてきた方向は、県道側ではなく、ベランダ側の前に広がっている草むらの中からだった。
距離はおそらく、サービスエリア内と住宅街を隔てているフェンス付近よりも手前だと思われる。
しかも、だ。
その後にも聞こえてきた鈴音から判断するに、段々とこちらに近づいてきているようだった。

そうはいっても、である。
過去ブログ『サービスエリアの空の下 120』で前述した通り、草むらに広がる草は伸び放題なので、とてもじゃないが、鈴音を鳴らしている正体の姿を目視で捉えられない。
そのせいで、私にできることは限られる。
できるだけ気配を消して、ただ待つしかできない。
それが、非常にもどかしかった。

鈴音を鳴らしながら近づいてくる正体は、男性が信じて疑わない、幽霊状態の”シロ”くんの仕業なのか……。
それとも、私と面識がある、例の茶色猫様の仕業なのか……。
まったくべつの猫様の仕業なのか……。
はたまた、人知を超えた存在のものなのか……。

どの可能性も排除できないまま、私は耳に意識を集中し続けた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉