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サービスエリアの空の下 122

できるだけ気配を消して、鈴音の正体が近づいてくるのを待っている間、脇の県道を走る車が絶えることはなかった。
いつの間にか増え始めた行き交う車は軒並みスピード違反で走り去るので、エンジン音が騒がしい。
とくに大型トラックのエンジン音はうるさくて、撒き散らかしていく排気ガス共々、実に不快だった。
しかも、大型トラックが通り過ぎる際、その振動で二階建ての古びた木造住宅が小さく揺れる。
その度に軋み音を立てるので、それら騒音と振動のせいで鈴音の正体が驚いて怖がり、こちらへ近づくのを止めてしまわないか、私は気が気でなかった。

それにしても、車が通る度にこんなに騒がしいと、落ち着かないだろうな……。

目の前の家屋の住人に対し勝手に同情していると、不意に、ガラガラという勢いのいい音がした。
音が聞こえてきたのは、ベランダ側からだ。
急いで覗き見ると、ベランダに設置されている縁側に、ご年配の女性の姿があった。
おそらく、先ほどのガラガラ音は、あのご年配の女性がベランダと室内を隔てる窓を引き開けた際の音だろう。

それはさておき。
ご年配の女性は窓を開けっ放しにしたまま、ベランダの向こうに広がる草むらを凝視している。

なんだ……ちゃんとご在宅じゃないか……。

居留守を使われたのかと思い、その不満を消化するために、私は一つ、大きく息を吐いた。
それでも、ご年配の女性は、私に気づかない。
相変わらず縁側に立ち、ベランダの向こうに広がる草むらに意識を集中し続けている。

一体全体、なにを見ているのだろう……。

気になった私は、ご年配の女性に倣って、草むらに視線を向けてみた。
けれども、草むらしか確認できない。

うーむ……。

私は再び、ご年配の女性に目を戻す。
ご年配の女性は同じ姿勢のままだ。

こうなると、声をかけるタイミングが難しい。
もしかしたら、ご年配の女性の目には”なにか”の存在が見えていて、それを見失わないように集中しているのだとしたら、私の声かけは邪魔にしかならないからである。
『あんたがうるさいから、行方を見失ったじゃないか!』などと怒られるかもしれないことを懸念し、私は唇を結んだままでいた。

ただし、だ。
このまま黙って覗き見る格好を続けるのは、どうにもこうにも心地が悪い。
やはり、どこかのタイミングで声かけを実施したいと思う。

スムーズにそれを行うには、微動だにしないままの状態から動いてくれると助かるんだけどなあ……。

私はそう思いながら、ご年配の女性が動きを見せてくれることに期待して待った。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉