「そうですよね……。分かりました。話します。本当の飼い主に代わって、ボクがKの捜索を行っている理由は……」
ようやくF様が白状した内容は、以下だった。
先ず。
Kちゃんの本当の飼い主様の名前はA様という女性で、F様とは結婚前提でお付き合いをしているという。
二人はつい最近、同棲を始めた仲だった。
『サービスエリアの空の下 12』で綴った通り、Kちゃんは今回、家電を運んできた運送業者が開け放ったままの玄関ドアから逸走してしまったわけだが、その家電とは、新居で同棲を始めるにあたって購入した物だったようである。
Kちゃんの逸走時、家にいたのはF様で、A様は仕事の出張中により留守だったそうだ。
加えて、F様は猫様との暮らしが初めてで、Kちゃんの習性や性格などをしっかりと把握していなかったという。
Kちゃんはこれまで、完全室内外で暮らしてきた。
F様が知っているKちゃんはいつも、A様がそれまで住まわれていた部屋のベットの上で丸くなっているばかりだったので、まさか家の外に飛び出すとは思いもしなかったようだ。
そういうわけで、Kちゃんの逸走原因は、F様の油断が招いた結果であった。
Kちゃんの逸走に気づいたF様は狼狽し、私に連絡をよこした。
それから、『サービスエリアの空の下 12』・『サービスエリアの空の下 13』の流れを経て、無事にKちゃん保護に至ったのは前述の通りである。
ならば、なにはともあれ一件落着と思えるが……。
F様曰く、実際、そうはいかないらしい。
というのも。
Kちゃんを逃がしてしまったことで、F様は、A様からこっぴどく責められた。
それだけであるならば、まあ、致し方ないことではある。
いくら婚約者といえど、幼い頃から愛情をかけて育ててきたKちゃんを不注意で逃がされてしまったわけだから、怒る気持ちは分からないでもない。
Kちゃんが逸走してしまった日の朝も、出張に出かけるA様から、
「玄関ドアとか窓を開けっぱなしにないように、本当に気をつけてね!」
と釘を刺されていたらしいので、尚更だ。
Kちゃんを逃がしてしまった事実を、F様がA様に伝えたのは、私に相談電話を入れる直前だったのが真相だという。
それまでは、迷子ペット様についてをネットで調べ、自力でチラシを作り、捜索をしていたようだ。
できるならば、Kちゃんの逸走をA様に知られることなく無事に解決し、何事もなかったようにするつもりだったらしい。
だが上手くいかずに焦っている最中、A様から、
「Kの写真と動画を送って」
と連絡が入ったそうだ。
こうなると、さすがに観念するしかなく、F様はA様に白状した。
〈続く〉
あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように
富山桃吉