「事情はよく分かりました。では、お宅に訪問させて頂きます」
私の言葉にF様はよろこび、裏返った声でいった。
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「いえいえ。せっかくの機会なので、Kちゃんにも会いたいですしね」
「Aだけではなく、K自身もきっと、御礼を伝えたいと思っているはずなのでよろこびますよ。な、K?」
F様の呼びかけにKちゃんが鳴いて応じたのが、スマフォ越しに聞こえた。
「それで、その……お越し頂くのはいつ頃になりますかね? 早速Aに報告しなければならないので……」
先ほどは、『もしも、こちら方面にお越しになることがありましたら、家に立ち寄って頂けませんか?』といっていたはずだが、A様の様子を聞く限り、急いであげた方が良さそうだ。
私はスケジュールを確認した後、候補日を上げた。
「早ければ、そうですね……明日の午後なら伺えるかと思いますが、いかがですか?」
「助かります! Aもちょうど、出張明けで休みのはずですから」
「では、明日ということで。それと、繰り返しになりますが、念のためにKちゃんの診察はお忘れなく」
「はい。Kの様子を見て、今日か明日の午前中には動物病院に連れて行くつもりです」
「お願いします。捕獲器に関しては、訪問させて頂いたついでに持ち帰りますので、郵送は結構です」
「分かりました」
「では、明日」
「お待ちしてます」
以上が所用の実である。
そして、道中に立ち寄ったサービスエリアで、白猫様とキジ白猫様たち・彼ら三匹の保護を頼んできた男性に出逢うこととなったわけだ。
高速道路はさほど渋滞しておらず、スムーズに進んだ。
高速道路を降りてからもそれは同じで、到着予定時間よりも早く、A様とF様・Kちゃんが暮らすお宅に着いた。
実際にお会いしてみると、電話での印象通り、F様は大人しそうな感じの方だった。
F様に対して随分と強気な通告をしていたA様に関しては、見た目からはそれを想像できないくらいに、やわらかい人当たりだった。
もっとも、通告云々については、F様から、
「聞いてないことにしてください。ボクがそこまで話したのをAが知ったら、絶対に怒られますので……」
といわれているし、恋人同士の話にいちいち首を突っ込むつもりもない。
私としてはとにかく、Kちゃんが穏やかに暮らせれば、それが一番だ。
当のKちゃんはというと、とても人懐こい性格の猫様だった。
初めて会う私にもすり寄ってきて、A様やF様とお話している間、ずっと私の膝の上で丸まっていた。
その様子を見て、A様は、
「さすがKの命の恩人!」
と微笑んでばかりいた。
一方のF様は、少しヤキモチ妬きながら羨ましそうにしていた。
〈続く〉
あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように
富山桃吉